『ビジネス法務』2020年6月号の「連載」は「株主・株式からみた中小企業M&Aの実務」です。その中に「中小企業の株式の基本知識」のコーナーがあります。事業承継を目的とした中小企業M&Aで圧倒的多数を占めるスキームは、株式譲渡によって買収の対象となる株式会社の経営権を獲得する方法です。したがって、中小企業M&Aを成功させるためには、中小企業における株式の実態を把握しておくことが不可欠となります。このコーナー記事では、中小企業の発行する株式に関する基本的な内容、実務で登場する特徴的な部分について解説されています。
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内容
Ⅰ はじめに
Ⅱ 株式
Ⅲ 株式の譲渡制限
Ⅳ 株券
1 株券発行会社と株券不発行会社
2 株券の記載事項
Ⅴ 株式に関する定款上のチェックポイント
1 属人の定め
2 相続人等に対する売渡請求
3 募集成立(原始定款の場合)
Ⅵ 終わりに
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
今般、後継者不足等による事業承継の問題やそれに付随するM&Aのニーズが高まっています。
M&Aのスキームとしては、株式譲渡が検討されることも多いですが、M&Aを行う際に、法務デューデリジェンスの過程で、株式にまつわる問題が発見されることも少なくありません。
特に、実務上多い例としては、株券に関する問題です。
旧商法下では、平成16年まで、全ての会社が株券発行会社でしたが、平成16年の商法改正では、株券不発行の定めが定款にない限りは株券発行会社となり、平成18年施行の現在の会社法では株券不発行が原則となっております。
平成18年以前に設立された会社で、定款変更に株券不発行の定めがない場合、現在においても株券発行会社となりますが、そうであるにも関わらず、株券を一度も発行したことがなく株式譲渡が行われていたという事例も散見されます。
株券交付を伴わない株式譲渡の場合には、株式譲渡が無効と判断されるおそれもあり、M&Aの障害になることもあります。
本稿には、その様な株券の問題に加え、株式とはどのような法的性質があるか、中小企業に多い譲渡制限株式についての解説、株式に関する定款上のチェックポイントも合わせて紹介されておりますので、是非ご参考にされてください。
M&Aに限らず、株式の問題は会社の根幹に関わる重大な事柄ですので、そういった面でもぜひ本稿をご確認頂ければ幸いです。
(弁護士 西尾 順一)