『ビジネス法務』2020年5月号の「特集」は「勝つ『訴状』の作り方」です。「訴状」(準備紙面)には法理論とことばを武器にする弁護士の力量すべてが表れるといっても過言ではありません。要件事実に基づいた基本的な書き方以上の“プラスアルファの技術”、特にほかの弁護士の考え方や工夫にふれる機会はそう多くはありません。訴状起案にあたり、どのような心構えを持つべきか。ストーリーが浮かび上がるような文章で、裁判官にわかりやすく説得的に届く訴状を作成するにはどうすればいいのか。依頼者から必要な情報を得るための工夫は何か。本特集では勝訴を導く訴状作成のプロセスと技術を検討します。
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内容
・良い訴状とは何か? 訴訟における訴状の位置付けと起案の視点
・ケース研究 事案の詳細が不明確、決定的な証拠がない場合の起案のコツ
・ケース研究 専門性が高い事案の起案のコツ
・裁判官は「訴状」のどこを見ているのか
・「良い訴状」作成のための依頼者コミュニケーション
・企業における訴訟対応と法務部門の役割
・具体例にみる訴状作成の工夫とポイント
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
・企業における訴訟対応と法務部門の役割(32頁~)
本稿は、「起案の思考回路から、実際の書き方まで勝つ『訴状』の作り方」という特集を構成するものの一つです。相手方から訴訟を提起された場合の初動の在り方、その際の検討事項などを分かりやすく整理し、説明されております。
「訴訟」というと、勝訴・敗訴という判決による結論にまず意識が向きますが、現実問題として、訴訟に対応する(「応訴」といいます。)には必然的にコストがかかることを忘れてはなりません。コストとしては、時間と費用が典型ですので、要するに、①勝訴・敗訴の結論、②解決までに要する時間的コスト、③訴訟に要する費用的コストにバランスよく目配せし、適切な解決を目指すことが必要になるのです。
企業の紛争においては特に、冷静に対応方針について分析・判断し、紛争が終了した後に、経済的に、経営的に、プラスとなるような解決が目指されるべきです。
また特に、社外弁護士との打ち合わせのポイントとして指摘されている、①有利な事実だけでなく不利な事実も伝える、②事実と推測や意見を区別して伝える、③関係する資料を収集して時系列に整理する、といったポイントは、我々弁護士がお話を伺う際に、常に意識している部分です。訴訟分析・判断の前提として、客観的事実の整理は必須ですが、そのために欠かせない観点といえますので、意識していただくとコミュニケーションがよりスムーズになるかと思います。
本稿に限らず、訴訟に関する興味深い特集となっておりますので、この機会にご一読ください。
(弁護士 菊地 紘介)