『ビジネス法務』2025年12月号の「特集2」は「条項例に学ぶ『時間』にかかわる契約実務」です。その中に「契約不適合責任の期間制限」(執筆:伊藤敬之弁護士)があります。購入した商品に不具合が見つかった場合に問題となる契約不適合責任。いざというときに権利行使できるよう、契約不適合責任の期間制限について、整理されています。
- Ⅰ 契約目的物の品質保証に関する法制度の概観
- 1契約不適合責任(民法)
- 2商法
- 3製造物責任法
- 4その他法令
- Ⅱ 実務上の留意点
- 1検査に関する定め
- 2担保期間の定め
- Ⅲ まとめ
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1 はじめに
本稿では、契約不適合責任の期間制限について解説されています(元執筆者:伊藤敬之弁護士)。
2 契約不適合責任(民法)
売買契約において、引渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約内容に適合しないとき(契約不適合)は、買主の救済手段として、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足物の引き渡しによる履行の追完を請求することができると定めています(562条)。
さらに、代金減額請求権(563条)、損害賠償請求(415条)、契約の解除(541条、542条)といった手段もあります。
もっとも、買主がこのような権利を行使するには、契約不適合を知ったときから1年以内に売主に通知しなければならないとされています(566条)。ただし、数量に関する契約不適合にはこのような期間制限はありませんし、また、売主が引渡しの時に契約不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、上記期間制限は適用されません。
3 商法
商法では、商人間の売買については、買主は、目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならないとして、検査義務が定められています(526条1項)。
そして、買主が検査により契約不適合を発見したときは、直ちに売主に通知しなければ、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除をすることができないとされています(同条2項前段)。
さらに、買主が種類又は品質に関する契約不適合を直ちに発見することができない場合において、買主が引き渡しから6ヶ月以内に契約不適合を発見したときも、上記と同様、直ちに売主に通知しなければ、追完請求等をすることができないとされています(同項後段)。
4 実務上の留意点
上記のような民法、商法上の定めがあることを前提に、契約交渉が行われることになります。企業間の売買契約では、担保責任期間を短めに、あるいは長めに設定することや、商法526条2項の適用を排除する旨の定めを設けることもあります。
5 おわりに
今回もお目通しをいただき、ありがとうございました。
売買契約書では、担保責任期間を明確に定めておく必要がありますが、その前提となるのは、民法等の法律における規定です。顧問先の企業様におかれましては、契約書の内容でお悩みが生じた際には、ご気軽にご相談ください。

弁護士 小川 頌平(おがわ しょうへい)
札幌弁護士会所属。
2025年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)