『ビジネス法務』2020年7月号の「実務解説」は「改正労働基準法における賃金請求権の消滅時効」です。民法改正によって、使用人の給料などに関する短期消滅時効(1年間)が廃止されました。通常の債権は、①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または②権利を行使することができる時から10年間行使しない時に時効消滅することになりました。これらの改正を受け、労働基準法でも、賃金請求権の消滅時効期間が5年(ただし、当分の間は3年)に延長されるなどの改正が行われました。
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改正に伴う各種期間の変更
改正前
改正後
賃金請求権の消滅時効期間
2年
→
5年(当分の間は3年)
記録の保存期間
3年
→
5年(当分の間は3年)
付加金の請求期間
2年
→
5年(当分の間は3年)
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
本年4月1日から施行されました改正民法では,債権の種類によって消滅時効の期間を定めていた従来の定めが削除され,原則として債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間,又は債権者が権利を行使することができるときから10年間というシンプルな内容に改正されました。
これまで,労働者の使用者に対する賃金請求権の消滅時効は,労働基準法115条により,支払期日から2年間とされておりましたが,民法改正に伴い,5年間に伸長されることになります。もっとも,当面は5年間ではなく3年間とされます。
労働紛争の中で,多くの割合を占めているのは未払残業代の請求事件でありますが,従前は過去2年間分の賃金について対応すればよかったものがその期間が伸長され,使用者側の負担が増えることになります。
そのため,使用者側としては労働時間の把握がより求められることになりますので,「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日基発0120第3号)などを参考に見直す必要があるといえます。
また,その他の改正事項についてもきちんと把握しておくことは非常に重要ですから,是非この機会に本稿をご一読ください。
(弁護士 京谷 周)