2021.9.21
【ビジネス法務】在宅勤務における「従業員監視」はどこまで許されるか?
『ビジネス法務』2021年9月号の実務解説は「在宅勤務における『従業員監視』はどこまで許されるか?」です。新型コロナウィルス感染症拡大を受けた在宅勤務の普及が進んでいます。これにより、従業員の勤務するようすが見えなくなり、勤怠管理や人事評価が難しくなったという声が多く聞かれるようになりました。在宅勤務中の従業員を“見える化”しようと情報通信技術(ICT)を用いた各種モニタリング(監視)ツールの利用を考える企業も多いとされています。本稿では、在宅勤務時におけるICTによるモニタリングの法的問題点について解説がされています。
- Ⅰ 企業がモニタリングを行おうとする背景
- 1労働時間管理の必要性
- 2事業場外みなし労働時間制の採用は困難に
- 3企業のニーズ
- Ⅱ 法的な検討
- 1モニタリングの根拠
- 2個人情報保護法による制約
- 3プライバシー侵害権となる場合
- (1)判断基準
- (2)各種ツールとプライバシー権侵害
- (3)プライバシー侵害を考える際の視点
- Ⅲ 使用者がとるべき手続き
- Ⅳ おわりに
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中、在宅勤務が急速に普及しました。
労働者を雇用する企業には、いわゆる働き方改革の一環として、労働時間の把握が法律上の義務が課されています。しかし、一挙に在宅勤務が進んだことで、以前の当たり前のように毎日職場に出勤していたときに比べて従業員の勤務状況がみえにくくなり、いかにして労働時間を把握するかが課題として浮き彫りになったといえます。
また、在宅勤務では、業務を行なう空間と私的空間が明確に切り分けられていないという特徴もあり、労働時間把握義務を徹底しよう、あるいは職務専念義務が果たされているかの監督を万全にしようとして過度の監視をすると、従業員のプライバシー権を侵害する危険をはらみます。
本稿においては、在宅勤務の普及を支える情報通信技術(ICT)を利用した勤務状況の把握として、PCの操作情報、メールやチャットのチェック、カメラやGPSによる監督といったツールを例に、各監視方法ごとに検討が加えられております。
個々の監視ツールも利用の仕方によって従業員に与える不利益はさまざまなグラデーションをもち得るうえ、判断の基準とされる社会通念(常識)も時代と共に変動するものです。ICTにより様々な情報を得ることが可能になる一方、従業員の権利侵害となることのない様に監視方法を導入する必要があるため、是非本項をご一読いただき、趣旨に沿った適切な制度の構築に役立てていただきたく存じます。
(弁護士 菊地 紘介)
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)