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【ビジネス法務】法務担当者のためのクイズで鍛える人事労務の判断力〜解雇・懲戒

『ビジネス法務』2025年11月号の「特集1」は「法務担当者のためのクイズで鍛える人事労務の判断力」です。その中に「解雇・懲戒」(執筆:木下達彦弁護士)があります。クイズ形式による、ポイントが解説されています。

  • 1 解雇権濫用の判断における4要素
  • 2 解雇回避努力が求められた事案

<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

1 はじめに

本稿では、従業員に対する解雇と懲戒処分における留意点が解説されています(元執筆者:木下達彦弁護士)。

2 解雇

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合にはその権利を濫用したものとして無効となります(解雇権濫用法理、労働契約法16条)。

特に、経営上必要とされる人員削減のために行う解雇、いわゆる整理解雇については、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④解雇に至る手続の妥当性、という4要素から判断されております。

戦略的な整理解雇に関する近時の裁判例として、東京地判平成28年8月9日ウエストロー・ジャパン2016WLJPCA08098003(トプコン事件)があります。

本裁判例では、経営戦略的な意味での人員削減の必要性があると認めることができるが、人員削減の必要性が高度にまたは十分に存在するとまでいえないため、相当手厚い解雇回避努力等が求められる(たとえば配転を検討するにあたっては異動候補先として幅広く他の職種・職務内容も検討すべき)、として解雇無効と判断されています。

3 懲戒

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質および態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして当該懲戒は無効となります(労働契約法15条)。

そして社会通念上の相当性には、手続的な相当性も含まれると考えられております。

手続的相当性が問題となった近時の裁判例として、東京地判令和3年9月7日労経速2464号31頁(テトラ・コミュニケーションズ事件)があります。

本裁判例では、従業員が「この件で、私が不利益を被ることがありましたら、訴訟をしますことをお伝えします。」とのメッセージを送信したことに対して、翌日弁明の機会を付与せずにけん責処分とした対応について、従業員に弁明の機会を付与しなかったことは手続的相当性を欠くと判断されています。

4 おわりに

今回もお目通しをいただき、ありがとうございました。
従業員の解雇や懲戒処分は、人事労務において特に紛争が生じやすい分野となっております。今月号のビジネス法務では、「クイズで鍛える人事労務の判断力」と題して特集が組まれており、本稿をはじめとして人事労務分野のポイントが解説されておりますので、ぜひお目通しになることをおすすめいたします。

弁護士 小川 頌平(おがわ しょうへい)

札幌弁護士会所属。
2025年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

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