第87回目は、同一労働同一賃金④です。
正社員と非正規雇用労働者との間で賃金に相違がある場合、その要因として賃金の決定基準やルールの違いがあることがよくあります。
この場合、「正社員と非正規雇用労働者は将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」といった主観的・抽象的な説明だけでは不十分です。
賃金の決定基準・ルールの相違は、必ず、以下の客観的・具体的な実態に照らして、不合理なものであってはならないとされています。
①職務の内容(業務の内容及び責任の程度)
②職務の内容・配置の変更の範囲(将来の見込みも含む人材活用の仕組み)
③その他の事情(成果、能力、経験など)
特に、人材活用の仕組みを待遇差の理由とする場合は、転勤の範囲や、人事異動によって経験する部署の範囲等にどの程度差があるかを具体的に確認し、その差を踏まえて基本給の差が不合理ではないかを検討することが求められます。
ガイドラインなどでは、基本給の趣旨・性格に応じて、不合理な待遇差とならないための具体的な考え方が示されています。
事業主は、基本給の決定基準やルールが正社員と異なる場合、その違いを職務の内容、変更の範囲、その他の事情という客観的な実態に照らして説明できるように、制度を明確化し、労使で共有することが重要です。
次回テーマは、「同一労働同一賃金⑤」です!

社会保険労務士 上戸 悠吏江(うえと ゆりえ)
2008年太田綜合法律事務所(現PLAZA総合法律事務所)。2018年社会保険労務士登録。北海道出身。