『ビジネス法務』では「債権法改正、企業対応の総点検」が連載されています。2019年12月号の連載では、「消滅時効に関する債権法改正の留意点」が掲載されています。改正のポイント、実務上のポイントについて解説されています。
<太田・小幡綜合法律事務所の弁護士解説>
権利を行使しない状態が継続した場合に、その権利の消滅を認める「消滅時効」の制度につき、債権法改正において大幅な改正が予定されています。
例えば、現行法において、①権利を行使できる時から10年間権利を行使しない場合に時効消滅するとの規定がありましたが、改正法では、これに加え、②権利を行使できることを知った時から5年間行使しない場合に時効消滅するという規定が盛り込まれます。時効が成立する期間をいつから数え始めるか、という「起算点」につき、客観的起算点の規定(①)に加え、主観的起算点の規定(②)が定められるということです。①か②いずれかの期間の経過により、時効期間が満了することとなります。
他にも、時効中断事由とされていた仮差押え及び仮処分の位置づけが変わったり、権利について協議を行う旨の合意という制度が新たに導入されたりなどの改正が予定されています。
また消滅時効は、「援用」という、権利消滅の効果を享受する旨の意思表示をして初めて有効になるところ、連帯債務者の一人につき時効が完成した場合に関する規定が改正されることの影響で、現行民法と異なり、連帯債務者が消滅時効を援用することが認められなくなります。
本稿では、消滅時効制度に特化して現行法と改正法を比較して解説がなされており、大変理解しやすく整理されております。改正前後の制度を概観することができるため、ぜひこの機会にご一読ください。
(弁護士 菊地 紘介)