『ビジネス法務』2020年2月号の「実務解説」は「『限定提供データ』の侵害対応をめぐる最新実務」です。2018年5月、企業が活用する大量に蓄積された電子データを保護するための改正不正競争防止法が成立しました。データの保護は古くから議論がされてきましたが、今般ついに立法化に至ったものです。今後のデータの不正利用をめぐる実務に大きな影響を与えそうです。この限定提供データ侵害について実務への影響や対応について解説されています。
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Ⅰ データの法的保護
1 契約による保護とその限界
2 営業秘密侵害、著作権法、不法行為による保護とその限界
(1)営業秘密侵害
(2)著作権法の保護(データベース)
(3)著しく不公正な手段によるデータの使用(一般不法行為)Ⅱ 限定提供データ侵害
1 改正の背景
2 限定提供データとは
(1)限定提供性
(2)相当蓄積性
(3)電磁的管理性
3 侵害行為
4 効果Ⅲ 具体的な事案への対応
1 AIデータ関連
2 個人情報関連
3 営業データ関連
4 実務への影響
(1)新規ビジネスへの影響と留意点
(2)侵害対応
<太田・小幡綜合法律事務所の弁護士解説>
平成30年5月、企業が活用する大量に蓄積された電子データを保護するため、不正競争防止法が改正されました。
具体的には、「限定提供データ」の不正取得・使用等が、新たに「不正競争」の定義に加えられ、かかる行為に対する民事上の措置を採ることができるようになりました(不正競争防止法2条1項11号~16号)。
ここで、「限定提供データ」とは、①業として特定の者に提供する情報として、②電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法)により、③相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)をいうとされています(不正競争防止法2条7項)。
つまり、上記では便宜的に①~③の番号を振りましたが、①~③の要件を満たす情報であれば「限定提供データ」に該当し、「限定提供データ」を不当に取得、開示等を行うと「不正競争」となり、不正競争防止法によってかかる行為の差止請求、損害賠償請求を行うことが可能になります(不正競争防止法3条、4条)。
この制度は、例えば、AI等を利用したデータベースを利用させるビジネスにおいて、そのビジネスを行う事業者のデータを保護することができるようになります。
データ提供事業者には朗報である一方で、第三者が有償で提供しているデータを取得・加工して新たな付加価値をつけて顧客に提供する事業者にとっては、「限定提供データ」の侵害に該当しないように注意する必要も生じます。
是非この機会にご一読いただき、「限定提供データ」の制度概要についてご確認ください。
(弁護士 京谷 周)