第78回目は、職場における熱中症対策③です。
二つ目の重要な義務として、事業者は熱中症の症状悪化を防止するために必要な措置とその実施手順を、事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知することが義務付けられました。これには、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察または処置を受けさせること、そして事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先および所在地などが含まれます。これらの措置は、「熱中症を生ずるおそれのある作業」において適用されます。
この「熱中症を生ずるおそれのある作業」とは、WBGT(湿球黒球温度)28度または気温31度以上の作業場において、継続して1時間以上または1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業を指します。
これらの対策は、熱中症による死亡災害を回避し、重篤化させないための適切な対策として「緊急に求められる対策」と位置づけられています。前述の通り、熱中症の重篤化が「初期症状の放置・対応の遅れ」に起因することが多いため、具体的な手順と緊急時の連絡体制を明確に定めることは、迅速な「発見」「判断」「対処」を可能にし、結果として重篤化を防ぐ上で不可欠です。
事業者はこれらの明確な基準に基づき、具体的な予防策と緊急時対応計画を策定し、従業員に周知することで、熱中症による健康被害を未然に防ぐ責任を負います。
厚生労働省からは、これらの詳細な情報を確認できるパンフレットやリーフレットなどの資料も提供されていますし、ご質問などありましたらお気軽にお問い合わせください。
次回テーマは、「育児・介護休業法⑭」です!

社会保険労務士 上戸 悠吏江(うえと ゆりえ)
2008年太田綜合法律事務所(現PLAZA総合法律事務所)。2018年社会保険労務士登録。北海道出身。