第78回は、ドコモ・サポート事件【東京地裁令和3年6月16日判決 労働判例1315号85頁】です。
本件では、有期労働契約での雇止めの適法性が争われました。
1 事案の概要
Xさんは、平成25年9月4日、ドコモ・サポート株式会社(以下「Y社」といいます。)との間で、契約期間を同年10月1日から平成26年3月31日までとする有期労働契約を締結しました。
その後、XさんとY社との間の有期労働契約は、4回にわたって更新されました。
Y社は、平成30年2月14日、Xさんに対し、同年3月31日をもって雇用期間満了とし、今後契約更新を行わない旨を通知しました。
Xさんは、Y社に対し、平成30年3月13日付けの書面により、労働契約法(以下「労契法」といいます。)19条に基づき、本件契約の更新の申込みを行ったところ、Y社は、本件契約の更新は行わない旨を回答しました。
→Xさんは、労契法19条2号により従前の有期労働契約の内容で契約が更新されたものであるとして、平成30年4月から平成31年3月までの賃金等を請求する訴訟を提起しました。
2 有期労働契約での雇止めの適法性をめぐる判断基準
有期労働契約は契約で定めた契約期間が満了することにより終了するのが原則です。もっとも、①「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる」場合に、②当該有期労働契約の契約期間が満了するまでの間に労働者が当該契約の更新の申し込みをしたか、または当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申し込みをしており、③使用者が当該申し込みを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、有期労働契約は更新されることとなっています(労契法19条2号)。
3 本判決の概要
本件では、
・Y社では、有期契約労働者については、無期契約労働者へのキャリアアップの仕組みを設ける一方で、無期契約労働者の登用試験に合格しない者については、長期雇用の適性を欠くものと判断し、更新限度回数または契約期間の上限により契約を終了するという人事管理をしていた
・有期契約労働者は、無期契約労働者の登用試験に合格しない限りは、有期契約労働者として5年(更新限度回数4回)を超える長期間の雇用を継続していくことは予定されていなかったこと
・Xは、Y社に採用された当初から、本件契約の更新限度回数は最大で4回であることを認識したうえで本件契約を締結しており、その認識のとおり、本件契約が更新されていったものといえること
・Xは、平成28年度及び29年度に、エリア基幹職社員の採用募集に応募し、選考試験を受けたが、いずれの年度においても選考試験に合格できなかったこと
→以上からすれば、平成30年3月31日の本件契約の満了時点で、本件契約が更新されるものと期待することについての合理的な理由があると認めることはできない。
4 おわりに
今回もお目通しいただき、ありがとうございました。
有期労働契約は契約期間の満了により終了するのが原則です。もっとも、従業員の方から労契法19条の要件をみたすことにより労働契約は更新されていると主張して、当該従業員との間に紛争が生じることもあります。
当該紛争においては裁判実務を踏まえた対応が必要となるところですので、顧問先の皆様におかれましては、雇止めに関するお悩みが生じた際には、お気軽にご相談をいただければと存じます。

弁護士 小川 頌平(おがわ しょうへい)
札幌弁護士会所属。
2025年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。