2016.2.2
景品表示法による規制について
1 景品表示法について
皆さんは、景品表示法という法律をご存じでしょうか。
景品表示法とは、「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、」(景品表示法1条)の法律です(以下、「法」といいます。)。
企業活動においては、各社が顧客獲得のために自社の提供する商品やサービスの宣伝・広告が行われますが、その一環として、景品類が提供されたり、あるいは、商品やサービスの品質等がアピールされる場合があります。
景品表示法は、このような事業者による顧客獲得のための行為のうち、①不当な景品類の提供行為と②不当な表示を防止することをその目的としています。
2 不当な景品類の提供行為の制限について
不当な景品類の提供行為に関する規制については、全ての業種に適用される制限と特定の業種のみに適用される制限があります。
全ての業種に適用される制限としては、①懸賞による景品類の提供に関する事項の制限、②一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限の、2種類が存在します。
また、特定の業種に適用される制限としては、新聞業、雑誌業、不動産業、医療用医薬品業、医療用具業及び衛生検査所業について、それぞれ景品類の提供に関する規制が設けられています。
3 不当な表示の防止について
不当な表示に関する規制については、大別すると3種類があり、①商品股は役務の品質その他の内容についての不当表示(法4条1項1号)、②商品又は役務の価格その他の取引条件についての不当表示(法4条1項2号)、そして③公正取引委員会が指定する不当表示(法4条1項3号)に関する規制がなされています。
具体例としては、中古自動車の取引で走行距離が偽られている場合や一般的な国産牛のお肉をあたかもブランド牛のお肉かのように表示することなどが上げられます。
4 商品購入者に抽選でハワイ旅行をプレゼントする場合は?
(1) これからの年末商戦においては、催事場などで、消費者に抽選券が配られ、比較的高額な商品が景品とされているような場合が見受けられます。それでは、例えば商品購入者には抽選で「ハワイ旅行」プレゼントという企画を立案する場合、どのような点に気をつける必要があるでしょうか。
(2) まず、「景品類」とは、「顧客を誘引する手段として取引に付随して提供する物品や金銭などの済上の利益」のことを意味しています。ハワイ旅行のプレゼントについては、旅行券等のプレゼントであり、このプレゼントの提供による顧客獲得を目的としているので、「景品類」の提供に当たります。
(3) 次に、今回のように「景品類」を「抽選」でプレゼントする場合については、「くじその他偶然性を利用して定める方法」にあたり、「懸賞」による景品類の提供の場合に該当します。
(4) そして、このような「懸賞」により「景品類」を提供する場合については、景品表示法上は、景品類の「価格」について規制がされている点に注意が必要となります。
公正取引委員会の告示によれば、商品やサービスの取引価格が「5000円未満」の場合には「取引価格の20倍」が景品類の最高限度額であり、商品やサービスの取引価格が「5000円以上」の場合には「10万円」が景品類の最高限度額とされています。
また、提供出来る景品類の総額の規制として、懸賞付きの商品やサービスの売上予定総額の2%までという規制が課せられています。
そうしますと、例えば、「ハワイ旅行」の旅行券が例えば10万円を超えるようなものであれば、景品表示法に違反する結果となる可能性があります。景品表示法に違反した場合には、消費者庁から事案に応じて、違反行為の差し止めなどの「措置命令」が行われる可能性があります。
(5) 仮に、事業者においてより高額な商品を景品とすることを考えているような場合には、「一定の地域や業界の事業者が共同」して景品類を提供するという方法が考えられます。これを一般に「共同懸賞」といいます。
例えば、「◯◯商店街」や市町村等の一定の地域の同業者の相当多数で「◯◯祭り」を開催するなど、多数の事業者が共同して抽選会を行うような場合が挙げられます。
この場合にも景品類の価格についての規制が存在していますが、共同懸賞の場合には、商品やサービスの取引価格に関わらず景品類の最高限度額は「30万円」とされています。そのため、一事業者が懸賞を行う場合と比較してより高額な景品類を提供することが可能となるのです。
なお、提供出来る景品類の総額の規制については、懸賞付きの商品やサービスの売上予定総額の3%までという規制が課せられています。
5 最後に
知られているようで意外とあまり知られていないこの法律、企業活動において顧客獲得のための宣伝・広告活動は必須ですから、企業におけるコンプライアンスの問題として、是非、宣伝・広告活動を担当される方には、是非ご留意頂ければと思います。
(弁護士 山下 剛)