弁護士法人PLAZA総合法律事務所 PLAZA LOW OFFICE

【ビジネス法務】消費者に対する損害賠償請求・違約金に関する条項

『ビジネス法務』2025年10月号の「連載」は「差止請求事例から考える利用規約のチェックポイント」です。その第2回は「消費者に対する損害賠償請求・違約金に関する条項」(執筆:小林直弥弁護士/土田悠太弁護士)です。規約作成場の留意点が述べられています。

  • Ⅰ はじめに
  • Ⅱ 近時の差止請求事例と留意点
  •  1消費者に弁護士費用を負担させる条項
  •  2消費者が支払う賠償額の予定・違約金を定める条項
  •  3消費者の故意・過失を問わない条項

<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

1 はじめに

本記事では、BtoC取引における損害賠償・違約金規定の消費者契約法上の有効性について解説されています。

2 消費者契約法

消費者契約法10条には、次のように、消費者の利益を一方的に侵害する条項を無効とする強行規定(契約上の合意によっても効力を覆すことができない規定)があります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第10条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

3 係争事例

上記のような消費者契約法の規定を巡り、近時は、以下のような係争事例がありました。

①消費者に弁護士費用を負担させる条項の有効性

株式会社ロイヤルエンタープライズが自社の賃貸借契約書において、「賃借人に賃料の滞納があった場合は、当社が対応に要した一切の費用(合理的な範囲の弁護士費用を含む。)を全て賃借人の負担とする」旨を定めていました。

この点、裁判例上は、一部の裁判例(安全配慮義務違反に基づく損害として弁護士費用を認めた最判H24.2.24民集240号111頁)を除き、どのような場合に弁護士費用が相当因果関係ある損害として認められるかは明確になっていないため、BtoC取引において一方的に弁護士費用を賠償条項に組み入れておくと、消費者契約法10条により無効とされる可能性があります。

ロイヤル社の係争事案では、和解的解決として、弁護士費用を賠償金として組み入れた規定が削除されることになりました。

②違約金条項の有効性

レンタカー会社の利用規約において定められていた「仮受人が規定返還場所以外の場所にレンタカーを返還した時は、違約金として、回送のために当社が要した費用の3倍の金額を支払うものとします。」という規定が消費者契約法10条に違反するものであるとして争われました。

この係争を受けて、当該レンタカー会社は、「返還場所変更違約料金=回送のために要した金額」として利用規約を修正しました。

4 おわりに

今回もお目通しをいただき、ありがとうございました。
弊所の顧問先様にも、BtoCを中心に事業を行われている事業者様が多くいらっしゃいますが、本稿をきっかけとして、今一度、利用規約等を見直していただき、その効力について疑義がございましたらご相談をいただければと存じます。

弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)

第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

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