『ビジネス法務』2025年12月号の「特集2」は「条項例に学ぶ『時間』にかかわる契約実務」です。その中に「契約終了・中途解約の勘所」(執筆:金子順事弁護士)があります。裁判例の示唆をふまえながら、留意点と具体的な条文例が紹介されています。
- Ⅰ 契約終了局面をどうとらえるべきか
- Ⅱ 契約類型ごとの法的整理
- Ⅲ 裁判例にみる実務上の教訓
- Ⅳ 条項設計における工夫と具体例
- 1中途解約条項と予告期間
- 2業務の性質に応じた清算条項の明示
- 3終了後の処理義務の明文化
- Ⅴ おわりに
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1 はじめに
本記事では、契約終了局面における留意事項について解説がされています(元執筆者:金子順事弁護士、本誌94頁)。
2 契約終了局面の重要性
日々の契約実務では、契約締結や契約履行の場面に焦点が当てられ、契約終了に関する規定は簡潔にまとめられているケースが少なくありません。
もっとも、契約終了の局面こそ、もっとも利害が対立しやすい場面であり、中途解約の可否、成果物の取り扱い、既払金の清算条項等に関する取り決めが頻繁に問題になります。
3 契約類型ごとの法的整理
委任契約、準委任契約では、当事者はいつでも解除することができる(民法651条1項、656条)とされていますが、相手方にとって不利な時期に解除がされた場合は解除者に損害賠償義務が生じます(同法同条2項)。
請負契約では、仕事の完成前であれば注文者はいつでも契約を解除できるとされていますが(同法641条)、製作途中の成果物に関する割合的報酬請求の可否が問題となることが多くあります。
そして、フランチャイズ契約等の一定期間の取引関係の継続が念頭に置かれている「継続的契約」では、中途解約条項を契約書に組み入れていても、当該解除権の行使を信義則上制限するとする裁判例が少なくありません。
これは、フランチャイズ契約等の「継続的契約」においては、長期的な取引関係を念頭に置いて初期投資(設備投資等)がされるケースが少なくないことや、契約終了後に新規取引先への入れ替えを行うためには相当の時間がかかり、休業損失等も生じるケースが少なくないことといった点に鑑みて、解除権行使の際には、相応の引継ぎ期間(一例としては30日~90日程度)を設けることを要請する判例法理です。
4 おわりに
今回もお目通しをいただき、ありがとうございました。
顧問先の企業様からは、日々、契約書チェックに関するご依頼をいただいているところです。本記事では、上記の他にも、契約交渉中に意識すべきことなどについても解説されておりますので、ぜひ一度お目通しいただければと思います。

弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)
第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)