『ビジネス法務』2020年3月号の「特集」は「今こそ変化のとき 電子契約のしくみと導入プロセス」です。「なぜ今の時代、契約書だけが紙なのか」。そんな疑問や不満を持ちつつも、日頃の業務に追われていませんか。実態がわからないという理由から「電子契約」の導入にふみきれない企業も多いのではないでしょうか。一方で働き方改革の浸透による業務効率化の要請に伴い、あらゆる場面でのペーパーレス化の検討が本格化し、「電子契約」を検討する必要性は確実に高まっています。本特集では、そもそも「電子契約」とは何なのか。どのような種類があるのか。訴訟ではどのように扱われるのかについて解説がされています。
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・電子契約をめぐる法規制と導入の検討軸
・電子契約の種類と技術
・電子契約の民事訴訟上の取扱い
・電子契約導入・活用Q&A
・企業の導入事例
―野村ホールディングス(株)
―LINE(株)
―freee(株)
―(株)SRA
<太田・小幡綜合法律事務所の弁護士解説>
二段の推定との関係、証拠提出の方法等 電子契約の民事訴訟上の取扱い(22頁~)
電子契約のサービスを提供する事業者が少しずつ登場する中で、電子契約のサービスを実際に利用しても大丈夫なのだろうかと感じている方もいらっしゃるかと思います。
そもそも、契約は原則として口頭であっても成立するとされており、保証契約など一定の例外を除いては、文書としての契約書がなかったとしても直ちに契約の成立が否定されるわけではありません。
ただし、後に契約の成立や内容を争われることがあり、契約に際して契約書を作成しておけば、その場合の証拠として役立つことになります。
もっとも、契約書があれば常に裁判所で契約の成立や内容が認められるわけではなく、契約を締結した当事者が誰なのか、締結する権限があったのかは問題になり得ます。
紙の文書の場合、文書の作成名義の印影がその名義人の印章によって顕出されたものであるとき(主に、実印での捺印とその印影の印鑑登録証明書があるとき)、①本人の意思に基づいて検出されたものと事実上推定され、その結果、②文書が真正に成立したものと法律上推定されることになりますが、これは「二段の推定」と呼ばれています。
真正に成立した文書のうち、特に契約書については、特段の事情がなければ、記載されたとおりの事実を認めるのが判例です。
電子契約のうち、電子署名法に基づく要件を満たす場合には、上記「二段の推定」が及ぶとされていますが、手続に時間がかかり使いにくいとされているようです。
電子契約のうち、プラットフォーム事業者が電子署名を行う場合には、迅速に手続ができる一方で、「二段の推定」は及びません。しかしながら、「二段の推定」が及ばないからといって電子契約のサービスは使えないということではなく、特に業務効率化の観点から利用できる場面は多いのです。
具体的な内容につきましては、本稿が非常に参考になりますので、是非この機会にご覧ください。
(弁護士 京谷 周)