第77回目は、職場における熱中症対策②です。
今回の改正によって事業者に義務付けられる措置の一つ目は、熱中症の重篤化を防止するため、熱中症の自覚症状がある作業者、または熱中症のおそれがある作業者を見つけた者が、その旨を報告するための体制を、事業場ごとにあらかじめ明確に定めることです。この報告体制には、連絡先や担当者を具体的に指定することが求められます。さらに、定められたこの報告体制は、関連する全ての作業者に対して事前に周知徹底されなければなりません。
この義務は、熱中症の兆候を早期に把握し、迅速な対応へと繋げることを目的としています。特に、熱中症による死亡災害の多発を踏まえた対策強化において、分析結果として死亡災害のほとんどが「初期症状の放置・対応の遅れ」によるものと指摘されています。作業者自身が体調の異変を感じた際や、同僚の異常に気づいた際に、迷うことなく速やかに報告できる環境を整備することは、熱中症の初期段階での介入を可能にし、症状の悪化を防ぎ、作業者の安全を確保する第一歩となります。
次回テーマは、「職場における熱中症対策③」です!

社会保険労務士 上戸 悠吏江(うえと ゆりえ)
2008年太田綜合法律事務所(現PLAZA総合法律事務所)。2018年社会保険労務士登録。北海道出身。