『ビジネス法務』2021年1月号の特殊は「非ネット・非IT企業のための『デジタル・トランスフォーメーション(DX)』の法務」です。コロナ下で進展するDX。企業が事業変革に取り組むにあたり、現れる法的リスクの対処において法務部門の協力は必須となります。しかし、急速に進むDXに対しどのように向き合うべきか。不安を抱える法務部員も多いのではないでしょうか。本特集では、非ネット企業・非IT企業の法務部員を読者対象として、DXを自社で進める場合、社外リソースを取り入れる場合のそれぞれににつき、法務部員が持っておくべき心構え・実践例、具体的知識を解説しています。その中でも、特に、モニタリング・コミュニケーション・新しい労働のあり方として労働環境・労務管理のDXに伴う諸問題について取り上げています。
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Ⅰ 労務管理のDX
1デジタル技術によるモニタリングと従業員のプライバシーの境界線
2評価のDX
Ⅱ コミュニケーションのDX
1コミュニケーションのDXとサイバーセキュリティ
2情報漏えいリスク
3DX環境におけるハラスメント
4AIなどの技術革新が進むなかでの労使間コミュニケーション
Ⅲ DXに伴う人材の流動化
1ワーケーション
2DXと兼業・副業の一般化
Ⅳ 今後の展望
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
本年は新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、通勤や事業所での密を避けるため、在宅勤務やテレワークの普及が一気に進みました。
デジタル技術の進歩により、在宅勤務やテレワークが容易にできるようになりましたが、従来型の事業所での勤務ではあまり考えられてこなかった問題が生じる場面もあります。
まずは、労務管理の点が挙げられます。事業所での勤務では、事業所において従業員の仕事ぶりをその現場で確認できるため、仕事のプロセスで人事評価をすることもできますが、テレワークでは同じように確認することはできません。技術上、モニタリングすることはできることもありますが、従業員の私的領域に踏み込むことがあり、プライバシーの侵害に留意する必要も生じます。
また、機密情報の漏洩リスクの点も挙げられます。事業所の端末であれば、セキュリティ対策が取られていることも多いかと思いますが、テレワークに使用する個人所有の端末の場合、必ずしもそのような対策が取られているとは限りません。特に個人情報を取り扱う場合、個人情報の漏洩は損害賠償責任を負うこともあり得るため、注意が必要です。
テレワークの採用に踏み切りたいものの、大丈夫なのか不安であることも多いかと思いますが、まずは生じる可能性のある問題点の把握をすることが非常に重要です。
本稿は、労働環境や労務管理の局面において生じる主な問題が取り上げられており、とても参考になりますため、是非この機会にご一読いただければと思います。
(弁護士 京谷 周)