『ビジネス法務』2023年9月号の特集3は「公益通報者保護法・改正後のいま」です。2020(令和2)年に改正公益通報者保護法が施行されました。同改正は通報者の保護を強化する重要なものでしたが、どのように対処すべきか頭を悩ませている人も多いと思われます。この中で、「内部通報制度の構築・運用の実務」(執筆:坂井知世弁護士)として実務的な観点をふまえての解説があります。
- Ⅰ 従事者指定義務および内部公益通報対応体制整備等義務
- Ⅱ 従事者の指定範囲および方法
- 1従事者として指定しなければならない者の範囲
- 2従事者指定の方法
- Ⅲ 内部公益通報対応体制を整備する義務
- 1内部公益通報受付窓口の設置等
- 2内部公益通報対応体制の運用
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
本記事では、公益通報者保護法に基づいて事業者が構築・運用すべき内部通報制度についての実務解説がなされています。なお、従業員数が300名以下の事業者については、内部通報制度の構築・運用が努力義務とされており、必ずしも構築しなければならないものではありません(公益通報者保護法11条3項)。
公益通報者保護法・内部通報制度の役割について、通報者が安心して通報できる環境を確保することや事業者が社内の違法行為を早期に発見・是正できるようにすること等が挙げられます。そのため、内部通報制度について、顧客や取引先等からの信頼の獲得やレピュテーションの向上をもたらすことにも繋がるため、通報者だけでなく事業者にとっても有用な制度であるといえます。
本記事では、内閣府作成の指針や消費者庁作成の指針解説を踏まえ、内部通報窓口の従事者の指定範囲や指定方法、内部通報制度の構築・運用方法、内部通報後の対応方法について、詳しく解説がなされています。
その一部をピックアップすると、例えば、内部通報制度の運用方法について、内部通報窓口の担当者の、組織の長や幹部職員からの独立性を確保する措置を取らなければなりません。具体的な措置としては、①通報内容について、社外取締役や監査機関にも報告を行う方法、②社外取締役や監査機関のモニタリングを受けながら内部通報業務を行う方法、内部通報窓口を事業者の外部(法律事務所や親会社、民間の専門機関等)に設置する方法等が紹介されています。また、内部通報を受け付けた後の対応として、①正当な理由(解決済みの案件に関する情報であることや、通報者と連絡が取れず、事実確認が困難であること等)がない限り、通報内容を調査しなければならず、②調査の結果、法令違反行為が明らかになった場合、速やかに是正に必要な措置を取らなければならず、③是正措置を講じた後、当該措置が適切に機能しているか確認しなければならないものとされています。そして、④調査の開始や是正措置を講じた後、やむを得ない理由がある場合(通知者が希望していない場合や通知者と連絡が取れない場合等)を除いて、通知者にその旨を通知すべきであると解説されています。
このように、本記事では、実際に社内で内部通報制度を導入するにあたって実務的な解説がなされています。この機会に是非ご一読ください。
弁護士 小熊 克暢(おぐま かつのぶ)
札幌弁護士会所属。
2020年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)