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【相続判例・実務】~第1回 「紀州のドンファン」遺言無効確認請求事件

今月から、労務判例をテーマとしたメルマガに代わり、相続判例・実務をテーマとしたメルマガをお送りさせていただくことになりました。

行政書士の関上には、事業承継や経営者の相続に関する汎用的なノウハウを紹介し、弁護士の白石と小川からは、裁判例や学説の対立を踏まえた事例ベースをお送りします。

第1回は、いわゆる「紀州のドンファン」遺言無効確認請求事件(大阪高裁令和7年9月19日 判例秘書L07950355)です。

本件では、自筆証書遺言の有効性が争われました。

1 事案の概要

被相続人Aは、和歌山県に出生し、金融業、酒類販売業等の幅広い事業展開によって多額の資産を形成する一方、多くの著名人・マスコミ関係者と交友関係があったほか、多数の女性と関係をもって、多額の金銭を渡すなどして世間の耳目を集めていました。

A氏は、平成30年5月に死亡しましたが、死亡時の相続財産はおよそ15億円でした。

その後、「自身の資産は、自身が世話になった和歌山県田辺市にキフする」という内容の自筆証書遺言書が見つかりましたが、A氏の兄弟らは、当該遺言書は偽装された無効なものであるとして、遺言無効確認の訴えを提起しました。

2 遺言の種類

遺言には、大きく分けて3つの種類があります。
①自筆証書遺言、②秘密証書遺言、③公正証書遺言です。

①自筆証書遺言は、原則として、全文を自書することが必要です。

②秘密証書遺言は、作成した遺言書(自筆でなくてよい)を証人2名及び公証人に提出して印章で封印し、自宅等で保管します。

証人及び公証人の印章を受けて公正に作成したことは証明できるものの、公証役場で保管されるものではないため、作成後の紛失リスクは避けられず、利用されるケースは多くはありません。

③公正証書遺言は、公証役場で公証人の面前で作成するものであり、作成された遺言書は公証役場で管理されます。数万円程度の作成費用を要しますが、一番リスクの低い遺言書の方式であるとされています。

3 本判決の概要

①遺言書の体裁

本遺言書は、メモ用紙に赤ペンで記載されたものであり、その記載内容には、「キフする」、「たのム」、「反対さいけん」などと平仮名やカタカナの混ざった単語が存在しており、原告らは、この点を指摘して、本件遺言書は不自然であると主張している。

もっとも、A氏は生前、赤色やピンクを好んでいたことや、A氏の遺品類からは、A氏が従前から、平仮名やカタカナの混ざった単語を使用していたことがうかがわれること等からすれば、本遺言書の作成者はA氏であると解することがむしろ自然である。

②筆跡鑑定

筆跡鑑定の結果も、A氏の自書によるものと判断されている。

③遺言書の内容

関係者の証言によれば、A氏は生前、兄弟との仲が悪く、兄弟には遺産を残したくないなどと漏らしていた事実がある一方で、A氏は、生前から、田辺市等へ1000万円を超える寄付を行っていた事実があること等からすれば、「A氏の全財産を田辺市へ寄付する」という内容は、A氏の遺言作成の動機と矛盾するものではない。

④結論

以上の事実を踏まえると、本遺言書は、A氏によって自書された有効なものと判断される。

4 おわりに

第1回の相続メルマガをお目通しいただき、ありがとうございました。
自筆証書遺言の有効性を巡る紛争は、後を絶ちません。若干の費用はかかってしまうものの、遺言者ご本人様の遺言意思の実現、相続人様間での無用な紛争を避けるためには、ぜひとも公正証書遺言の活用を検討いただければと存じます。
引き続きよろしくお願いいたします。

弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)

第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。

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