『ビジネス法務』2021年7月号の特集は「最新!テレワークの労務管理」です。新型コロナウィルス感染拡大を契機とするテレワークの急速な拡大。労働環境が多様化し、労働時間管理の難しさが顕在化しています。労働者が安心して働くことのできる良質なテレワークを推進し定着させていくために、今後はどのような労務管理が必要になるのでしょうか。本特集では3月25日に公表された新ガイドラインを基軸に、テレワーク時代の労務課題を克服するための視点を整理しています。
- Ⅰ テレワークの意義と健康問題
- 1テレワークの意義
- 2テレワーク時の健康問題
- Ⅱ 新ガイドラインの改定経緯
- 1旧ガイドラインの策定とテレワークの拡大
- 2新ガイドラインの改定と公表
- 3新ガイドライン改定後の作業
- Ⅲ 新ガイドラインの構成と注意点
- 1新ガイドラインの構成
- 2新ガイドラインを参照する際の注意点
- (1)新ガイドラインの記載に反する場合
- (2)新ガイドラインと民事上の責任の関係
- Ⅳ 新ガイドラインの各項目のポイント
- 1「3テレワークの導入に際しての留意点」
- 2「4労務管理上の留意点」
- 3「5テレワークのルールの策定と周知」
- 4「6様々な労働時間制度の活用」
- 5「7テレワークにおける労働時間管理の工夫」
- (1)自己申告による労働時間管理
- (2)中抜け時間の取扱い
- 6「8テレワークにおける安全衛生の確保」
- 7「9テレワークにおける労働災害の補償」
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、急速に普及したテレワークという働き方。従業員相互に働き方が可視化されている出勤型の働き方に比べて労務管理(労働時間の管理や、メンタルヘルス対策など)に困難な面があるほか、在宅勤務に要する費用を使用者にて負担すべきであるのかなど、テレワークに伴う新たな検討課題も多く登場しました。それらの検討に際して参考とすることができるガイドラインが、2021年3月25日付で公表されました。2018年に策定された旧ガイドラインからさらに検討を進め、改訂したものとも位置付けられます。
2 例えば労働時間管理の手法として、中抜けの報告義務を設けることで使用者の側からも把握が可能な形にすることに言及されているほか、長時間労働対策として、メール送付の抑制や、システムへのアクセス制限設定、時間外労働を行なう場合の手続を定めるなどの手法が紹介されています。他方、過度に労働者の権利に配慮して、いたずらにコストを増大させることは、適切なマネジメントとはいえません。ガイドラインを参照して盲目的に追従するのではなく、企業ごとの実態に合わせた合理的なテレワーク体制を構築する必要がありますが、本特集では、ガイドラインに対して批判的な検討も加えられており、その点も参考になると思われます。
3 新ガイドライン自体もチェックリスト部分を除けば17頁程度ですので、厚生労働省のHPから参照いただくとよろしいかと存じます。また、ガイドラインを参酌するにあたってのガイドとして、本特集にも目を通していただくと、より理解が深まるものと考えます。
(弁護士 菊地 紘介)
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)