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【ビジネス法務】労災・通勤災害・給与支払いほか-災害対応と労働法

『ビジネス法務』2025年3月号の特集は「主要法令の要請とは 災害・緊急時対応の法務」です。この中に、「労災・通勤災害・給与支払いほか-災害対応と労働法」(執筆:安倍嘉一弁護士)があります。労働法の観点から、災害発生時に予想される労働法上の問題点について概説があります。

  • Ⅰ 労働者の視点
  •  1災害によってけがをした場合
  •  2災害によって事業が中断し、就労できない場合
  • Ⅱ 使用者の視点
  •  1労働者が安否確認ができない場合
  •  2災害発生により出社がままならない場合
  •  3災害発生により人手が足りず、時間外労働をする場合
  •  4事業を休止している間の労働者への保護
  •  5災害の結果、会社の業績が悪化した場合
  • Ⅲ 平時の準備

<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

本記事では、労働法の観点からみた災害対応についての解説がなされています。

まず、労働者の視点から見た災害対応について、災害によって怪我をした場合、労災や通勤災害が認められる可能性があります。この点、労災について、厚労省の通達によれば、業務時間中や休憩時間中であっても、事業場施設内で被災したのであれば、労災認定が得られる可能性が相応にあると考えられます。

また、通勤災害についても、避難先からの通勤途中での被災、帰宅できずにホテルから出勤する際の被災、交通途絶のため早朝に出発した場合の被災などについて、適用が認められるほか、経路を逸脱する場合でも、緊急やむを得ない場合は通勤災害が認められる可能性があります。

次に、使用者が災害対策を怠ったために労働者が負傷した場合には、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求が認められる可能性があります。災害によって事業が中断した場合、「使用者の責めに帰すべき事由」があれば、労働基準法26条に基づき、平均賃金の6割の額の休業手当を受けられる可能性があります。

次に、使用者の視点から見た災害対応について、まず、従業員の安否確認を行う必要があります。しかし、災害に巻き込まれ、安否確認ができない労働者も想定されます。この場合、法的には、出勤できず、就労の意思も確認できないため、企業は欠勤として取り扱わざるを得ません。事業を中断している場合、休業手当の支給の有無が問題となりますが、休業とは労働者が労働の意思を持って労働の用意をしているにもかかわらず、労務の提供ができない場合を指すため、安否不明の場合は休業手当の支給対象とならないと考えられます。

また、人手不足による時間外労働が発生した場合において、労働基準法33条に基づき、事前にまたは事後に労働基準監督署の許可を得て、労働基準法36条の制限を超えて、従業員に時間外・休日労働をしてもらうことが考えられます。もっとも、事後に労働基準監督署の許可が得られず、労働基準監督署から休憩や休日を付与するよう命じられる可能性がある点、割増賃金の発生や安全配慮義務の問題が発生しうる点に注意が必要です。

次に、事業休止中の労働者の保護として、雇用調整助成金や雇用保険を活用することが考えられます。最後に、災害による業績の悪化に伴い人員削減の必要性に迫られた場合、従業員を整理解雇することが考えられます。この点、整理解雇の有効性について、①解雇の必要性、②解雇回避のための努力、③解雇する対象者の選定の合理性、④十分な説明手続の観点から判断されることになり、慎重に対応しなければ整理解雇が無効となってしまう可能性がある点に注意が必要です。

本記事は、災害時の労務対応について、多岐にわたり解説がなされています。この機会に是非ご一読ください。

弁護士 小熊 克暢(おぐま かつのぶ)

札幌弁護士会所属。
2020年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

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