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【ビジネス法務】労働法入門〜最新判例にみる「労働者代表」の問題点

『ビジネス法務』2019年11月号の特集は「今こそ基礎固め!労働法入門」です。昨今の働き方改革法の施行によって労働法への社会的関心と法務対応の必要性が高くなってきています。新設された義務など喫緊の対応事項についてつめ込む一方で、その背景にある労働法の基本的な考え方や概念をしっかりおさえる暇がないという人も多いのではないでしょうか。今回の特集では、今おさえておくべき労働法の基本理念や概念について、近時の変化をふまえながら解説されています。労働法を体系的に会得したいというビジネスパーソンには学習の手がかりに。すでに一通りの勉強を終えた人には最新知識へのアップデートや実務への応用の視点に。それぞれ活用いただける内容になっています。

 

項目は下記のとおりです。

  • ・規制の背景をおさえ全体像を理解する〜労働法の基本理念
    ・働き方の多様化でどう変わる?〜使用者が責任を負う「労働者」の判断基準
    ・勤怠管理だけでは不十分〜「労働時間、「休憩」該当性と把握のポイント
    ・選出プロセス上のリスクと回避の手段〜最新判例にみる「労働者代表」の問題点
    ・給与前払サービス、仮想通貨による支払の可否〜労働法の「賃金5原則」とFinTech
    ・企業が持つべき基本姿勢を再確認〜「同一労働同一賃金」の概要と対応ポイント
    ・労使双方の行動変化を見据えた検討を〜賃金等請求権の「消滅時効」をめぐる議論の概要

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<太田・小幡綜合法律事務所の弁護士解説>

労働基準法には、労働者保護の観点から、使用者に対して種々の義務を課すとともに、使用者による違反に対しては、民事上、刑事上の責任を負わせる制度となっています。
他方で、個々の事業内容、職場によって柔軟に運用する必要性もあることから、一定の事項については、事業場ごとに労使協定を締結することによって規制を解除する仕組みを設けています(労使協定が必要となる事項については、28頁の図表を参照してください。)。
労使協定の労働者側の締結当事者については、過半数組合が存在する事業場ではその過半数組合となりますが、存在しない場合には労働者間で過半数代表者を選出し、その者が労働者側の締結当事者となります。
しかしながら、その過半数代表者の選任プロセスを誤ると、事後的に過半数代表者であることを否定され、その結果労使協定の効力も否定されることになります。その場合、労使協定が有効であることを前提に解除された規制が復活することで、当該規制違反により使用者が責任を負うことになってしまいます。
適法に過半数代表者が選任されておらず、そのために労使協定が無効となった結果、適法に残業命令を行えず、残業命令違反による解雇も無効とされた事例(最判平成13年6月22日労判808号11頁・トーコロ事件)や、変形労働時間制が無効とされ、変形労働時間制によらない残業代を支払うこととなった事例(長崎地判平成29年9月14日労判1173号51頁・S社事件)も存在するところです。
そこで、本稿では、どのようなポイントに着目し、どのような考え方、やり方で過半数代表者を選任すればよいのかについて、詳細に解説されています。
使用者の意向に基づいて過半数代表者が選任されていないことを求める行政通達が出されたこともありますので、これまでに労使協定について適切な対策を実施してこなかった場合、本稿をお読みいただいたこの機会に再検討されてみてはいかがでしょうか。
ご不明点等ございましたら、いつでもご相談ください。

(弁護士 京谷 周)


協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)

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