『ビジネス法務』2020年1月号の特集は「起案・審査の第一歩『契約解釈』の技術」です。契約に不明瞭な部分がある場合、契約内容を確定するために契約解釈が必要になります。来たる2020年の4月に施行される改正債権法では、契約趣旨に照らした当事者の合理的意思の探求が1つのキーワードとして示されています。法務部のメイン業務である契約書の起案・審査。本特集では、契約解釈の基本原則から実務における着眼点まで、丁寧に解説がなされています。
<太田・小幡綜合法律事務所の弁護士解説>
私も契約書のレビューをよくご依頼いただいておりますが、日々の取引に欠かせないのが契約書です。
契約書の内容を確認するにあたって、お客様によって不利になっている条項がないかを洗い出すのは当然ですが、記載内容(特に取引の中心的部分)について、誰が見ても一義的に明らかとなっているかどうかも重要なポイントです。
記載内容が不明確であったり、抽象的で人によって違う読み方が可能であったりすると、トラブルになったときに当事者間の見解が平行線となるため、契約書に基づく解決が難しくなります。
そうなると、裁判所に持ち込んで紛争を解決することになりますが、判例は契約書の解釈に関し、当事者の合意内容について契約書等に明文がある場合には、その文理に従うことを基本とし、その文理が一義的に明確でないときは、他の定めの内容や規定ぶりとの関連等から意味を探求し、さらには、契約の目的、交渉に至るまでの経緯や交渉の過程、取引の慣行や社会の状況等の事情によるとしており、諸般の事情によって結論が変わり得ることを示しています。
本稿では、元裁判官である弁護士が、契約の解釈が問題となった最高裁判例について、その事案や判示内容等を詳細に解説しており、大変参考になります。
契約書を作成するのはこれから取引を開始するときであり、当事者間の関係も良好であるから、契約書など作成しなくても大丈夫だと考えがちですが、契約書が最も威力を発揮するのは、紛争化してしまって当事者間でコミュニケーションがとりづらくなったときだと思います。
そのときに、一見して明確な記載のある契約書が存在するかが、トラブルの早期解決だけでなく、未然防止にとって非常に大切です。
是非この機会にご一読いただき、契約実務についてご検討ください。
(弁護士 京谷 周)