『ビジネス法務』2022年1月号の特集は「企業間紛争解決の勘所!」です。昨今、法務部門がとる紛争解決手段は変容を見せつつあります。迅速・柔軟でコストも少ない、仲裁や調停などのADR(裁判外紛争解決手続)が注目されるようになっています。解決に向けた選択肢が増えたといえます。とはいえ、訴訟やADRのどちらかを選ぶべきかの判断は事案によって異なります。慣れていなければ、頭を悩ますこともあるかもしれません。本特集では、昨今の紛争解決手段を整理した上で、先輩弁護士や法務部員の紛争解決をもとに、実務に活かすために必要な知恵を紹介しています。
- ・企業間紛争解決手段の整理と近時の動向
- ・ADR活用時の見極め・検討のポイント
- ・外国企業との紛争に備えるための3ステップ
- ・企業間紛争の解決手段を変える民事訴訟IT化
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
2022年1月号は、特集1にて「企業間紛争解決の勘所!」と題して、企業間紛争を解決するための手続選択に関する論考が特集されております。
当事者間の任意交渉で和解により解決する方法、各種機関における調停又は仲裁手続、裁判所の判決による解決などは、代表的な紛争解決手続です。近時は、裁判外における紛争解決手続のことを、「代替的な紛争解決方法」という意味のAlternative Dispute Resolution、通称ADRと呼び、その利用の拡充傾向があります。
本特集を通じて、紛争の種類・性質に対応していかなる方法をもって解決するのか、手続選択の局面で検討すべき事項がわかりやすく整理されております。
例えば、訴訟は、日本国憲法82条1項にて裁判の公開原則が定められており、一般に公開される手続となります。そのため、企業の営業秘密に関する紛争の解決のために利用するには、営業秘密の漏洩リスクがあるといえます。そこで、非公開で行われ秘匿性が高い調停や仲裁といった紛争解決方法を選択することがより適切である、と判断されます。他にも、判断権者の存否や、結論の当事者に対する拘束性、解決までの時間的コスト、強制執行の可否、あるいは費用面など、様々な切り口で手続を分析することができます。
本特集については、外国企業との間の紛争に関する記述が多い印象を受けられるかと思いますが、手続の性質論は、国内企業間の紛争解決にあたっても同様に参考になるものです。あまり意識されたことはないかもしれない手続の性質論の導入として、大変分かりやすい記事であると思います。是非、この機会にご一読ください
(弁護士 菊地 紘介)
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)