『ビジネス法務』2025年8月号の「特集1」は「プロはこう動く、契約交渉のブレイクスルー」です。この中で「交渉理論に基づく戦略とテクニック」(執筆:射手矢好雄弁護士)があります。本稿では、交渉の理論を示し、それに基づく交渉戦略や交渉テクニックを解説。理論をふまえたうえで、テクニックを活用すれば、交渉が成功するとしています。
- Ⅰ はじめに
- Ⅱ 交渉の理論
- 1分配型交渉と統合型交渉
- 2交渉の7つのカギ
- 3ZOPA
- Ⅲ 交渉の7つのカギに基づく交渉テクニック
- 1交渉の準備段階
- 2交渉開始の段階
- 3交渉過程
- 4交渉文書
- Ⅳ 心理学に基づく交渉テクニック
- 1交渉の心理的側面
- 2心理学に基づく交渉テクニック
- Ⅴ まとめ
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1 はじめに
本稿では、交渉理論に基づく戦略とテクニックについて解説されています(元執筆者:射手矢好雄弁護士)。
2 交渉の理論:分配型交渉と統合型交渉
本稿では、交渉の2つのスタイルとして、分配型交渉と統合型交渉があると説明されています。
分配型交渉とは、交渉の対象となるパイの大きさは一定であり、それをどう分けるかという交渉スタイルです。ここでは、自分の利益をいかにして最大化するかに重点が置かれます。
これに対して、統合型交渉では、交渉当事者は双方が利益を得られるように、交渉を通じてパイを拡大して、互いの利益を最大化するような合意を目指すものです。
統合型交渉では当事者双方が利益を得て満足することになるので、統合型交渉のほうが分配型交渉よりも一般的によいとされています。
3 交渉の7つのカギ
ハーバード流交渉術における交渉理論を体系化し、それを実際の交渉で活かすための枠組みとして「交渉の7つの要素」というものがあげられています。
交渉の7つの要素は、①利益、②オプション、③根拠、④BATNA(Best Alternative to a Negotiated Agreement 交渉が成立しないときにとるべき最良の代替案)、⑤関係、⑥コミュニケーション、⑦合意からなります。
例えば、①利益とは、「自分はこの交渉でなにを実現しようとしているのか」「自分にとって本当に大切なものはなにか」を指します。自分だけでなく、交渉相手にも「利益」があることから、互いにとって重要な利益は何かを把握することが、交渉の出発点であるとされています。
4 ZOPA
BATNAと並んで、もう一つ重要な概念がZOPA(Zone of Possible Agreement)、すなわち「合意が可能な範囲」というものです。たとえば、売主が5000万円以上ならば売却してもよいと考え、買主が8000万円以下ならば購入してもよいと考えるならば、ZOPAは5000万円以上8000万円以下の範囲となります。ZOPAは、いくらの金額でオファーするかのアンカリングに関係します。
5 その他
上記以外にも、本稿では心理学に基づく交渉テクニックなどが紹介されています。
6 おわりに
今回もお目通しをいただき、ありがとうございました。
顧問先の皆様におかれましては、契約締結プロセスにおいて、相手方と交渉する場面は多々あることと存じます。今月号のビジネス法務では、契約交渉のブレイクスルーというタイトルで特集が組まれ、本稿をはじめとして契約交渉に係る様々な知見が紹介されておりますので、ぜひお目通しになることをおすすめいたします。

弁護士 小川 頌平(おがわ しょうへい)
札幌弁護士会所属。
2025年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)