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【旬の判例】~第3回 「海外需要開拓支援機構ほか事件」

第3回目は、「海外需要開拓支援機構ほか事件」です。
本件は、セクハラ行為や接待強要行為の有無と損害賠償請求の成否が問題となりました。

XさんはY5社との間で労働契約を締結し、Y5社とY1社との間の労働者派遣契約に基づいて、Y1社に派遣された、いわゆる派遣社員でした。
Y1社の懇親会において、Y1社の取締役であるY2さんは、Xさんら女性従業員に対し、「当たり!!ワインディナーwith監査役(交換不可)」などと記載され、封筒に入れられたくじ10枚を1人当たり2~3枚引かせました。
また、Y1社の歓送迎会の後、Y1社の執行役員であるY3さんは、駅のホームにおいて、Xさんが拒否したにもかかわらず執拗にXさんの方に手を回したり、電車内で何度もXさんの手を握ろうとしました。

そこで、Xさんは、
①Y2さん及びY3さんに対し、言動によって人格権が侵害されたと主張して、不法行為に基づき、それぞれ慰謝料400万円を請求し、
②Y1社およびY5社は上記人格権侵害にかかる対応においてそれぞれ就業環境配慮・整備義務を怠ったと主張して、不法行為に基づき、Y1社に慰謝料200万円、Y5社に慰謝料400万円等の支払いを請求し、
③Y1社がY5社との間のXさんにかかる派遣契約を更新しなかったことが、Xさんらが結成した労働組合の活動を理由としており、労働組合法7条の不当労働行為に該当し、これによりXの団結権等が侵害されたとしてY1社に対し不法行為に基づき慰謝料200万円等の支払いを請求し、
④Y1社の執行役員であるY4はY1社の人事部長に対して不当な目的で本件労働者派遣契約の更新拒否等をするよう指示したと主張してY4に対し不法行為に基づき、慰謝料400万円等の支払いを請求しました。

判決では、
①について
「Y3は、XがY3の手を払って拒否していることが明らかであるにもかかわらず、故意に複数回Xの肩に手を回そうとして、現にXの肩に触れたものであるところ、男性であるY3が女性であるXの意思に反して複数回その身体に接触した上記行為はXの人格権を侵害する違法行為というべきであって、不法行為に当たる」とし、
「Y3は派遣労働者であるXが執行役員であるY3に対して拒否の意思を示すことは容易ではないことは明らかであるのに、XがY3に対して拒否する意思を明確にしていることを意に介することなく複数回Xの肩に手を回そうとしたものであって、Xは、相応の羞恥心、強度の嫌悪感を抱いたものと推認される」が、「他方、Y3が接触した部位は肩というにとどまり、また、上記行為が10分間などの長時間に及んだとまでは認められない」などとし、Xが被った精神的苦痛に対する慰謝料の額は5万円が相当としました。

②について
「Y2が本件くじ引きをさせた行為は、H監査役の接待等を主たる目的として、Xの意思にかかわらず業務と無関係の行事にH監査役やY2と同行することなどを実質的に強制しようとするものであり、Xの人権を侵害する違法行為というべきである」とし、「本件くじ引きが主として接待の目的でされたもので業務と無関係な行事への参加等を実質的に強制するという内容であったことに照らせば、Xがこれにより相応の嫌悪感、屈辱感等を抱いたことは優に推認され、Y2においてもそのことを容易に認識し又は認識し得たというべきであって、Y2の故意又は過失は優に認められる」として、Xが被った精神的苦痛に対す津慰謝料の額としては、5万円が相当としました。

③について
Y1社は、Y2による本件懇親会及び本件くじ引きについて、Xが社外ホットラインに通報した後、速やかに関係者に対する事実関係の調査を実施し、弁護士の助言にもとづいてY2の行為を不適切と判断して厳重注意をしたのであって、その調査や判断の過程に不適切な点があったと認めるに足りる証拠はないなどとして、XのY1社に対する職場環境配慮、整備義務違反を理由とする請求は理由がないとしました。

④について
「Y5社に対する派遣労働者の交代要請、Xに対する出勤停止及び本件労働者派遣契約の不更新には、本件組合を弱体化させるなどの意図があったとは認められず、仮にY1社の各行為がY4の指示に基づくものであったとしてもY4による不法行為が認められる余地はない」としました。

最近、ハラスメント行為に関するご相談が増えております。
事案によってハラスメント行為の認定については判断が分かれるところで、明確な基準は特にないようです。
ハラスメント行為についての認定が後々大きな問題となることを避けるため、ハラスメント行為を発見した時点で、即座に弁護士等の専門家までご相談いただければと存じます。

弁護士 櫻井 彩理(さくらい さり)

第二東京弁護士会所属。
2020年弁護士登録、2021年PLAZA総合法律事務所入所。東京都出身。

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