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【労働法の基礎】~第3回 変形労働時間制②「1年単位の変形労働時間制」

第3回目は、変形労働時間制②「1年単位の変形労働時間制」です。

1年単位の変形労働時間制は、1か月を超え1年以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲で、1日および1週間について法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えて労働させることができる制度です。この制度を導入すると、1年以内の期間であらかじめ業務の繁閑に合わせて労働時間を配分できるようになり、効率的に働いてもらうことができます。例えば、12月から5月が繁忙期、6月から11月が閑散期の職場の場合、繁忙期の労働時間を長く設定し、閑散期の労働時間を短く設定することができるということです。

1年単位の変形労働時間制を採用するには、就業規則に定めることと、労使協定を締結し労働基準監督署へ届け出ることが必要になります。
労使協定で定める事項は、①対象労働者の範囲、②対象期間(1か月を超え1年以内の期間に限る)および起算日、③特定期間、④労働日および労働日ごとの労働時間、⑤労使協定の有効期間です。

①は、法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、「全従業員」や「A部署」といったように範囲を明確に定める必要があります。

②は、1年以内の期間で定める必要があり、最長は1年ですが、3か月や6か月といった期間を設定することも可能です。この期間を対象期間といいます。

③は、通常、対象期間における連続して労働させることができる日数の限度は6日と決まっていますが、特に業務の繁忙な時期がある場合、1週間に1日の休日が確保できれば、連続6日を超える勤務日数を定めることが可能になります。この繁忙な時期として定める期間を「特定期間」といいます。

④は、対象期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えないように、対象期間の各日、各週の所定労働時間を定める必要があります。1年単位の変形労働時間制は、対象期間が最大で1年と長期になるため、労働日数や労働時間に関する限度が定められています。対象期間における労働日数の限度は、1年当たり280日(対象期間が3か月を超え1年未満である場合は、280日×(対象期間の暦日数÷365))、労働時間は1日10時間、1週間で52時間が上限となっています。

⑤は、労使協定そのものの有効期間は②の対象期間より長い期間とする必要がありますが、対象期間と同じ期間とすることが望ましいです。

導入、運用にあたりお困りのことがあれば、ご相談ください。

次回は、「フレックスタイム制①」です!

社会保険労務士 上戸 悠吏江(うえと ゆりえ)

2008年太田綜合法律事務所(現PLAZA総合法律事務所)。2018年社会保険労務士登録。北海道出身。

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