『ビジネス法務』2023年8月号の連載は「ITサービスにおける『利用規約』作成のポイント」です。その中で、「プラットフォームビジネスにおける利用規約」(執筆:中山茂弁護士 古西桜子弁護士 柿山佑人弁護士)の最終回として、プラットフォームビジネスについての法律関係の整理や関連法案などが解説されています。
- Ⅰ プラットフォームビジネスとは
- 1プラットフォームビジネスの類型
- 2プラットフォームビジネスの性質・法的留意点
- Ⅱ プラットフォームビジネスにおける法的整理
- 1プラットフォーム事業者と利用者との法的関係
- 2利用者間の取引とプラットフォーム事業者の法的立場
- Ⅲ プラットフォームビジネスにおける固有の法規制
- 1近時の立法
- 2取引DPF法
- 3透明化法
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1 はじめに
本稿では、Amazonやメルカリなどに代表されるように、オンライン上での取引の「場」を提供する事業である「プラットフォームビジネス」について解説がされています。
プラットフォームビジネスは著しく拡大を続けている一方、消費者の事業者に対する責任追及が容易ではないといった問題点も指摘されています。近時は、消費者保護の観点からプラットフォームビジネス分野における法整備も進んでいるところであり、注目のテーマとなっています。
2 プラットフォームビジネスとは
プラットフォームとは、「情報通信技術やデータを活用して第三者にオンラインサービスの「場」を提供し、そこに複数の利用者層が存在する多面市場が形成されるもの」と説明されます(公正取引委員会HP参照)。
3 プラットフォーム事業者の責任
プラットフォーム事業者の利用規約には、プラットフォーム事業者は利用者に対して取引の「場」を提供するだけであり、利用者間の取引には原則として関与しないことを前提として、利用者間で生じたトラブルについてはプラットフォーム事業者は一切の責任を負わないと規定しているケースが多く見受けられます。
確かに、利用規約において、①利用者の取引は全て利用者間で直接行われるものであり、プラットフォーム事業者は当該取引に一切関与しないこと、②利用者間の取引で生じた取引について、プラットフォーム事業者は一切の責任を負わないこと等を規定しておくことは有用ではあります。
もっとも、プラットフォームの運用実体として、プラットフォーム事業者が利用者間の取引に実質的に関与していると認められるような場合には、上記利用規約の定めのみをもって、プラットフォーム事業者が免責されることになるわけではないことには留意が必要です。
4 近時の法改正
2022年5月1日から、「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(取引DPF法)が施行されました。
同法では、プラットフォームを利用している事業者(以下「対象事業者」といいます。)に対する消費者の責任追及を容易にするために、消費者がプラットフォーム事業者に対して対象事業者に関する情報を開示請求できる権利を規定しました。
プラットフォーム事業者としては、利用規約において、開示請求書のフォーマットを事前掲載しておくなどの対応が望ましくあります。
5 おわりに
今回もお目通しいただき、ありがとうございました。
私たちの生活に広く浸透しているプラットフォーム事業ですが、その適切な体制構築・管理運用には、種々の規制が絡んでいます(民法(定型約款規制)、個人情報保護法、資金決済法、著作権法など)。
ぜひ、本稿にお目通しいただき、利用規約や、管理運用実体に問題がないか、改めてご確認いただけましたら幸いです。
弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)
第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)