第32回目は、賃金③です。
労働基準法上の「賃金」に該当する場合、賃金支払い方法について、労働基準法24条で、基本となる5つの原則を定めています。①通貨払いの原則、②直接払いの原則、③全額払いの原則、④毎月1回以上払いの原則、⑤一定期日払いの原則です。前回は①と②について説明をしました。
③全額払の原則
「賃金」は、その全額を支払わなければなりません。したがって、分割して支払ったり、「積立金」などの名目で強制的に賃金の一部を控除(天引き)して支払うことは禁止されています(労基法違反)。
ただし、(ⅰ)法令に別段の定めがある場合、(ⅱ)従業員の過半数組合や過半数代表者と賃金の一部を控除する協定を書面(労使協定)で締結したうえで控除した場合には、違反にはなりません。(ⅰ)は、例えば、源泉所得税や社会保険料等の税金です。(ⅱ)は、社内預金、組合費、社宅、その他の福利厚生施設の費用等が考えられます。(ⅱ)を控除する際、労使協定が必要になることを今一度確認ください。
④毎月1回以上払いの原則
「賃金」は、毎月1回以上支払われなくてはなりません。賃金支払期の間隔が開き過ぎることによる、従業員の生活上の不安を除くことを目的としています。ただし、「賞与」や「臨時に支払われる賃金」に関しては、この原則は適用されません。
⑤一定期日払いの原則
「賃金」は、毎月一定の期日に支払わなければなりません。例えば、月給制の場合に「月の末日」としても本条違反にはなりませんが、「毎月10日から15日までの間」などの期日に幅を持たせる不特定の日や、「毎月第1月曜日」のように変動する日にすることは許されません。支払日が不安定で間隔が一定しないことによる労働者の計画的生活の困難を防ぐことを目的としています。
次回テーマは、「賃金④」です!
社会保険労務士 上戸 悠吏江(うえと ゆりえ)
2008年太田綜合法律事務所(現PLAZA総合法律事務所)。2018年社会保険労務士登録。北海道出身。