『ビジネス法務』2025年9月号の「連載」は「続・条件(悪魔の証明)」(執筆:藤井塁弁護士)です。契約書表現における「失敗ゼロ」のオキテとして書かれています。
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1 はじめに
本記事では、契約書作成の際に留意すべき表現について連載されています。
第8回は、『悪魔の証明』です。(元執筆者:藤井塁弁護士、本誌79頁)。
2 『悪魔の証明』とは
契約書において、法律効果の発動条件として、「存在しないこと」が条件として定められている場合があります。
例えば、次のような規定です。
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①不測の損害が生じた場合は、甲乙双方の協議により対応を決定する。
②前項の協議において有効な解決策が見いだされなかった場合、甲及び乙は本契約を解除することができる。
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上記では、「協議において有効な解決策が見いだされなかった」ことが解除権の発動条件として規定されていますが、この「有効な解決策が見いだされなかった」こと、すなわち、「なかったこと」の証明(悪魔の証明)は容易ではありません。
相手方から、今はまだ解決策を見出すことができていないが、もう少し協議を継続すれば解決策が見つかるなど反論される可能性もあるからです。
(補足ですが、「悪魔がいない」ことの証明は困難であることに例えて、「ないこと」の証明は「悪魔の証明」と一般的に比喩されています。)
3 対応策
上記のような「悪魔の証明」を避けるためには、次のように「存在すること」を法律効果の発動条件として規定しておくことが有用です。
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①不測の損害が生じた場合は、甲乙双方の協議により対応を決定する。
②前項の協議については、当事者の一方が相手方に対して書面で協議を申し入れることによって開始される。
③前項の協議開始から3カ月経過後は、甲乙いずれの当事者からも本契約を解除することができる。但し、有効な解決策について当事者に合意が成立した場合はこの限りではない。
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4 おわりに
今回もお目通しいただき、ありがとうございました。
簡易な契約書作成であれば、顧問先様自社で対応をされることも多々あるかと思いますが、本稿を1つのノウハウとして利用していただけましたら幸いです。

弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)
第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。

協力:中央経済社
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