2019.3.19
「不適切動画、法的措置へ 刑事告訴や損害賠償」というニュースから留意したい点
弁護士 太田勝久
- コンビニ大手のセブン−イレブン・ジャパンと、回転寿司大手「くら寿司」を運営するくらコーポレーションが、不適切な動画をインターネット上などに投稿したアルバイト従業員に対し、刑事と民事の両方で法的責任追及の検討を始めた。類似した問題が多発する中、強硬手段を示すことにより再発防止につなげる狙いがある。(北海道新聞の記事)
「従業員のモラル低下が、一部インターネットを通じて社会に流れ、企業のブランドイメージを損なう」という現象だと思います。投稿した本人は、会社や社会に与える影響を重大だと自覚していなかったと思います。単なる「仲間うちへの愉快なコンテンツ」と思っているかもしれません。しかし、こういうことを発想すること自体がモラル・意識の低下の現れだと感じます。会社側からすると、信頼していたスタッフがなぜそういうことをするのか、企業のイメージは下がり、信用を失うことになります。意図的に演出をしたごく一部のスタッフの行為とはいえ、「そんな会社・現場なのか」と疑われ、世に衝撃を与えることになります。目に見えない損害が発生し、その損害のダメージも大変大きいと言えます。
企業側としては、その従業員に対して、損害賠償請求が想定されます。加えて、業務の妨害とも捉えることができ、刑事問題にもなり得ます。刑事告訴もやろうと思えばできます。しかし、告訴することで問題を大きくすることは企業側の本意ではない。むしろ、法的な問題にすることよりも、社内教育の対策を徹底したほうがよいではないでしょうか。
企業は様々な人を雇用しています。正社員であれば当然、就業規則に則って仕事をします。アルバイトやパートでも社内規定やルールが定められています。その上で、お客さまに商品やサービスを提供して、満足の対価を頂いて存在しています。不適切な動画のような動きは、仕事のやり方というルールに反しています。
現在は慢性的な人手不足という側面があります。雇う方も労働のルールに反するような働き方をさせないことが肝要です。こういうところを徹底していかなくてはならないと思います。これは雇い主の責任であるとも言えます。
再発防止のためには、ルールを徹底して、仕事の意義「なんのために仕事をするのか」をきちんと理解してもらうことが大切です。そういう教育を繰り返し行う必要があります。同時に、労働契約の内容をなす就業規則がきちんと定められているかどうか。ここが出発点になります。従業員のための職務規程、やってはいけないことを明記して、理解してもらうことが大切です。パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、あるべき働き方を逸脱したなど、いろいろな問題が発生しています。時代に合わせた様々な対策を取る必要があるでしょう。