『ビジネス法務』2020年10月号の「特集2」は「コロナ下における雇用調整・人員整理の実務」です。その中で、「雇止め〜『不更新合意』の効力をめぐる近時判例の考え方」が寄稿されています。有期雇用における労働者の人員整理手段として「雇止め」があります。これは契約期間中の合意契約(希望退職募集など)や、使用者による一方的解約(解雇)のほか、期間満了時に、契約を更新せずに雇用終了とするものです。労働契約法19条には「雇止め法理」が定められています。この法理に関して近時判例からの解説がなされています。
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Ⅰ 雇止め法理
Ⅱ 雇用継続の合理的期待
Ⅲ 人員整理のための雇止め
1人選基準
2解雇回避努力
Ⅳ 不更新合意
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
有期労働契約の場合、期間が満了すれば当然に契約が終了するものと思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。以下に述べるとおり、有期労働契約が継続することもありますので、注意が必要です。
民法の原則によれば、有期労働契約は定められた期間が満了すれば、契約を更新しない限り契約関係が終了し、使用者は更新しないことについて特段の理由を必要としないことになります。
しかし、判例の積み重ねにより、有期労働契約であっても一定の場合には解雇権濫用法理(労働契約法16条)が類推適用され、合理的理由のない雇止めが無効とされてきました。この判例法理を雇止め法理といい、法改正により労働契約法19条として条文化されています。
労働契約法19条は、有期労働契約であって、19条各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなすと規定しています。
労働契約法19条1号は、反復更新等の態様から期間の定めのない労働契約と社会通念上同視できる場合をいいます。労働契約法19条2号は、当該有期労働契約が更新されるものと期待されることについて合理的な理由がある場合をいいます。
すなわち、雇止めを行う場合、反復更新等により期間の定めのない労働契約と社会通念上同視できる状況か、労働者において契約更新の合理的期待が生じている状況かどうかを確認し、雇止めの有効性を十分に検討する必要があります。
また、最近、雇止めの有効性に関連して、「不更新合意」の有効性についての議論が活発になっております。不更新合意とは、有期労働契約について当該契約期間を満了した場合には更新しないことをあらかじめ合意しておくことをいい、当該合意をした場合、期間満了によって当然に契約が終了するのかが問題となっております。近時の裁判例では、不更新合意を締結した状況や経緯等を踏まえてその有効性を判断する傾向にあるといえます。
本記事では、雇止めや不更新合意について近時の裁判例を踏まえ詳細な解説がなされておりますので、是非ともご覧ください。
(弁護士 小西 瑛郁)