右から3人目が中藤勝康社長。スタッフのみなさまと
関上 今回、当弁護士法人PLAZA総合法律事務所と業務提携をすることになりました。ありがとうございます。
中藤 こちらこそ、大変光栄に思っています。御事務所の前身である太田・小幡綜合法律事務所から長年に渡って法曹界で活躍されていて、知名度が高いのですね。今回の提携を知り合いの経営者などに話すと、皆さん「その弁護士事務所は知っているよ!」となります。当社としても心強い限りです。
関上 今日はあらためて御社のことをお聞きしたいと思っています。
中藤 当社は1982(昭和57)年に(有)エアクリーンサービス環境事業部として設立。主に、消臭や除菌の仕事をやっていました。2000(平成12)年、この会社から営業譲渡として、(有)北海道エンバイロニックを設立。その6年後、株式会社に組織変更して現在に至ります。従業員数は14人です。社名は「環境」を意味する英語のエンバイロメントからの造語です。
関上 業務内容としては、どんなことをしていますか?
中藤 消費者の食の安全に対する意識の高まりとともに、衛生管理に力を入れたいと考える飲食店や食品メーカーが増えてきました。当社はこうした食品関連の現場で、汚れや臭いなどだけではなく、目に見えない細菌・危害を可視化し、改善策を提案しています。衛生点検・食品細菌検査も含め、特殊美装・消毒などから害虫駆除までを、ワンストップで行なっています。行政OBによる有症クレーム発生時のコンサルティングにも対応しています。厨房や病院給食、食品製造工場などでの細菌検査や厨房の除菌作業、特殊美装・衛生管理用品販売などを手がけています。
関上 お客さん先というか依頼主はどのようなところですか?
中藤 ホテル、飲食店チェーン、スーパーマーケット、食品製造会社などが多いです。ホテルでいうと、札幌市内のシティホテルにはほとんど出入りしています。飲食チェーン店も、大手の居酒屋系や焼き鳥系などはだいたいやっていますね。各社・各店からは定期的な店舗厨房の衛生状態を確認する立ち入り調査(モニタリング)の依頼が多いです。
関上 そうなんですか。すごいですね。
中藤 最近は食品表示に関する案件が多くなっています。そばや小麦、かになどの特定の食品にアレルギーのある方が、誤って摂取しますと、最悪、アナフィラキシーショックをおこし命に関わる場合もございます。商品の原材料表示・栄養成分表示をきちんとしたいという思いから、「表記の仕方をおしえてほしい」とオファーがあります。道内においては、なかなかこの分野に関して助言できる会社が少ないことも要因かと思います。食品表示の検定があり、ある程度マニュアルも揃っているのですが、当社は机上の空論ではなく、実際に食品製造業経験者の成功と失敗の実績が蓄積していますので、経験値が豊富なところが強みかと思います。
関上 なるほどですね。他には強みというか特徴はありますか?
中藤 静岡県にある「株式会社中部衛生検査センター」様と提携をしています。検便の検査をする会社で、ISOの認証を持っています。検便検査のシェアは国内ではNO.1、50%以上を占める企業です。ここと提携するとともに、札幌にラボ(検査場)を設立しています。検便による通常検査(赤痢菌、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌)及びノロウィルス検査を2019年より実施しており、2020年からは唾液による新型コロナウィルスPCR検査などにも対応しています。札幌にラボができたことにより、いち早く検査結果を出せるようになりました。検査結果もウェブシステムで通知するなど、早く結果を知らせるための対応をしています。
関上 この仕事を始めるきっかけはなんだったんですか?
中藤 わたしは元々、ホテルマンでした。親戚が消毒剤を取り扱う仕事をしていて、その仕事を引き継ぎました。仕事をする中で、あるお菓子屋さんの事案に遭遇しました。食中毒をおこしてしまったんですね。その社長がクレームによってどんどんやせ細っていきました。「もう勘弁してくれ」と。見ていられなくなってきました。当社のクライアントである飲食店の経営を守るというか、休業という行政処分をいかに出さないようにする。こういったことが当社の使命であり、わたしの仕事の原点です。
関上 御社との出会いは、わたしの知り合いの飲食関係でクレーマー的なトラブルがあって、ホテル勤務の知人に相談したら、ご紹介いただいたというきっかけでした。「適任の人がいます!」ということで連絡したら、次の日には社長が現場にかけつけてくれました。料理を提供した時間などから、「普通だったらこのクレームはおかしい」と、知見をいただきました。同時に、クレーマーへの対応方法も教えてもらいました。その後、わたしが参加する勉強会に講師として来ていただくというお付き合いですね。ところで、問題・トラブルには、どのようなことがありますか?
中藤 最近は世の中が世知辛くなってきたというか、クレイマーみたいな人も増えているように感じます。愉快犯のようなシニアもいます。今はお客さん側もインターネットでいろんなことを知れる時代。味がおかしいとか、腐っているんじゃないかとか。注射器でヘンなものを注入したのではないか、などなど。妄想に近いクレームもあります。昔だったら、菓子折りもって謝って済んだことが、今は終わらなくなりましたね。年間50〜60件くらいトラブルに対応しています。
関上 予防とトラブル処理とどちらが多いですか?
中藤 もちろん予防のことが多いですね。事故を出なさないように、毎月、厨房に入って定点で観測しています。ダメな部分の危害・改善点を指摘する私たちが現場に入ることによって、クライアントのスタッフさんたちがきちんと準備するようになるのです。そうすることで、清掃の頻度が高まるといった副次的が効果もあります。当社がチェックして点数を付けていくので、現場が良くしていこうという方向につながります。いわゆる抑止力になっている部分があろうかと思います。
関上 今年は食品業界で大きなトピックがあると聞きました。
中藤 はい。2021年の6月からHACCP(ハサップ)の義務化がスタートします。これは国が推進し、食品衛生のレベルを海外(米、EUなど)と同レベルに上げていきましょうという取り組みです。食品に関わるすべての事業者に対して、約93業種の手引書などを参考にやってくださいとなっています。この法律改正があるので、食品加工会社、ホテル、飲食店などは大変。当社にコンサルティングの依頼が増えてきました。札幌は、「札幌市食品衛生管理認証制度(さっぽろHACCP)」という制度があり、この認証を2002(平成14)年から審査する側として参画していることも、実績として認められていると思います。
関上 そうなんですか。特に中小企業などは、対応が難しそうですね。ますます、活躍の機会が増えるというところでしょうか。当事務所との提携に関しては、どのようなメリットをお感じですか?
中藤 わたしどものトラブルは、生き死に関わること。健康に関わることなので、交通事故と同じように訴訟問題に発展します。今回の提携は、いろいろな部分で付加価値につながると期待しています。これまで当社では顧問弁護士もいなく、訴訟問題とか責任の所在がということになった時にお手上げでした。こうした案件の際に、すぐにボールをパスできる相手ができたという感覚です。当社のクライアントに提供できるサービスがまたひとつ広がりました。
関上 当事務所的にもメリットがあります。法律のことしかできないと思われがちですが、今回の提携から、食品に関するプロを顧客ご紹介できるとことで付加価値につながると思っています。これまでも、当事務所では、「法務・会計プラザ」という士業間のつながりを大切にしてきた風土があります。御社との関係で新たな分野の相乗効果が生まれると考えています。いま、飲食業界はコロナ下で大変厳しい環境にあります。事業の再生であったり、後継者問題であったり、この分野はわたしたちの得意分野。ノウハウがあります。エンバイロサービスさんのクライアントさんで、こういった課題を抱えられた企業に対して、法律事務所としてお手伝いができると思っています。
中藤 以前、銀行からの紹介で「食品工場を買いませんか?」という話が舞い込んだ会社から相談がありました。ハサップ的に見てどうなのか、機能面や衛生面ではどうなのかと、アドバイスを求められ、査定してくれと。導線はどうか、稼働するにはこういった機械を設備投資しなければダメだとか。物件の売買にも精査が大切で、法律事務所様と一緒にこうした案件でもサポート&アドバイスできると考えています。
関上 専門用語でデューデリデンスと呼ばれている分野のことですね。今回、われわれの提携は、とてもいい組み合わせになると思っています。まずは、提携をしたことのPRにつとめたいと思います。本日は貴重なお時間ありがとうございました。
(本文敬称略)