『ビジネス法務』2021年8月号の特集1は「改正民法関連規定から検討する有効な『同意取得』方法とは」です。会員登録を伴うオンラインサービスが普及するなか、法務部において「利用規約」を審査する機会が増えています。「いざ」というときに実効的な紛争解決を導くためにも、利用規約のあり方を考えることはますます重要になってきます。本特集では、利用規約において特に法的トラブルに発展しやすい条項を取り上げ、策定・審査の際の留意点を解説しています。
- Ⅰ はじめに
- Ⅱ 改正民法の定型約款
- 1定型的款規定の創設
- 2「定型取引」および「定型約款」
- 3組入要件
- Ⅲ 組入要件をふまえた実務的な同意の取得方法
- Ⅳ 利用規約の変更
- Ⅴ 利用規約の同意に関する最近の消費者庁の議論
- Ⅵ おわりに
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
本記事では、利用規約への同意の取得というサービス提供の入り口に重点をおいて、定型約款に関する規定や消費者契約法に触れて、どのように同意を取得するのが望ましいかについて解説がなされております。
そもそも、定型約款とは何か、利用規約と定型約款は同じものなのか、と疑問を持たれる方もいらっしゃると思いますので、まずは簡単にご説明したいと思います。
改正民法において定型約款に関する条文が新設されたことにより、定型約款の合意及び定型約款の変更に関する法的効果等についての条文が整備されました。定型約款とは、定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいいます(民法548条の2第1項柱書参照)。また、定型取引とは、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいうとされています(民法548条の2第1項柱書参照)。
そして、以上のような定義があることから、全ての利用規約が定型約款に該当するわけではありません。定型約款の定義に該当する利用規約のみが、定型約款の条文の適用を受けることになります。定型約款に関する民法の条文には、一定の場合に定型約款の個別の条項について合意したとみなす条文(民法548条の2第1項)があるため、利用規約が定型約款に該当する場合は、従前と比べてその利用規約の適用の有無の判断が容易になったといえます。
利用規約には以上のような定型約款に該当するかどうかも含め検討すべき事項がいくつかあります。特に利用規約に関する同意の取得が適切になされていなければ、利用規約の条項の適用がないということになるため、利用規約への同意の取得方法には注意が必要です。本記事は同意取得の方法について解説がなされておりますので、利用規約を用いてサービスを提供している企業の皆様は、この機会にぜひ本記事をご覧ください。
(弁護士 小西 瑛郁)
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)