『ビジネス法務』2022年5月号の実務解説は「NFTアートをめぐる取引の仕組み、法律関係、活用可能性(上)」です。近年、急速に注目が集まるNFT(非代替性トークン)アート。「実物」が存在しないデジタルアートを、ブロックチェーン技術の活用によってアナログなアート作品と同様に譲渡できる仕組みが提示されています。これらの法律関係や、社会に与える影響について解説されています。
- Ⅰ NFTアートの革新性
- Ⅱ アート作品をめぐる取引と権利関係
- 1 アート作品の売買と著作権
- 2 「実物」のないアート作品の取引
- Ⅲ NFTアートをめぐる取引と法律関係
- 1 NFTアートの取引とは
- 2 NFTアートの契約設計
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
本記事では、近年急速に注目が集まっているNFTアートについての解説が行われています。
NFTとは、Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略語であり、ブロックチェーン技術を利用して、特定のデジタルデータに対して独自のトークンIDを割り当て、特定可能なものとする技術のことを指します。NFTアートとは、このNFT技術とデジタルアートを結び付けたものを指します。
NFTアートの発行・取引の流れ・特色としては、アーティスト又はアーティストの委託を受けた者がブロックチェーン上にトークンIDを発行し、特定のデジタルアートにこれを割り当てる。NFTアートを誰かに譲渡した場合、その取引状況がブロックチェーン上に記録される。その後の取引状況も同様にブロックチェーン上に都度記録され、NFTアートの発行から現在の保有者に至るまでの流通過程が一本の鎖(チェーン)のように全て記録される、というものです(なお、NFTアートの発行者が誰であるのかが公開されていることから、正当な権限を有する者によって発行されているのかどうかの確認、つまり、実物のアート作品でいうところの真贋の鑑定も比較的容易です。)。
通常のデジタルアートは、油彩画等のアート作品とは異なり、基本的には実物が存在せず(データとして存在しているに過ぎず)、複製が容易な状態(言わば代替性のある状態)でインターネット上に存在しています。そのため、デジタルアートを取引の対象とする場合、デジタルアートの上記の特性故に、当該取引をめぐる法律関係が不安定なものとなります。
これに対し、NFTアートは、基本的には実物が存在しないという点については通常のデジタルアートと同じですが、ブロックチェーン技術を用いたトークンIDが割り当てられており、代替性がないという点に特色があります。そのため、NFTアートを取引の対象とした場合、通常のデジタルアートとは異なり、当該取引をめぐる法律関係が安定することから、実物のないデジタルアートではあるものの、金銭的価値を有するものとして評価されるようになります。また、この他にも、本記事で紹介されているように、ブロックチェーン上に記録されている各種取引情報とNFTアートの取引にかかる契約条件の組み合わせ如何により、様々な制度設計をすることができる、という利点があります。
本記事では、NFTアートのより詳細な解説が行われています。また、翌月号では、NFTの活用可能性等のさらなる掘り下げがなされる予定です。この機会に是非ご一読ください。
(弁護士 小熊 克暢)
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)