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【ビジネス法務】こんなに使える!不競法(下)

『ビジネス法務』2023年4月号の実務解説は「こんなに使える!不競法(下)」(弁護士 渡邉 遼太郎 先生 著)です。不正競争防止法は、広範な法目的を持つところ、他の知的財産法や競争法の補完的な役割を担うことも多く、他法令などが適用できない場合でも一定の要件を満たせば、不正競争防止法を活用できる場面も多い法律です。本稿では、秘密情報の保護にあたってのNDA(秘密保持契約)と比較しての本法の活用可能性などが紹介されています。

  • Ⅴ 秘密情報保護と不競法
  •  1NDAによる秘密情報の保護
  •  2不競法の活用
  • Ⅵ データ提供ビジネスと不競法
  •  1契約による提供データの保護
  •  2不競法の活用
  • Ⅶ 不当表示と不競法
  •  1不当表示と景表法
  •  2不競法の活用可能性
  • Ⅷ おわりに

 <PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

1 はじめに

不正競争防止法では、「不正競争」の用語の範囲が広く設定されています(不競法2条各号)。そのため、他法令が適用されない事案でも、不競法上の法的保護が与えられる場面があります。なぜなら、不競法の目的は、事業者間の公正な競争等という点で広範なものだからです(不競法1条)。

たとえば、不競法では、損害賠償請求を基本とする民法と異なり、差止請求や刑事罰等の制度が存在します。なぜなら、事業者の営業上の利益を保護するには、事前対策として差止請求の必要性が高いからです。

本記事は、不競法が活用できる場面として、①秘密情報を保護する場合、②商品等の誤認表示があった場合につき、書かれています。

2 秘密情報の保護

(1)不競法以外での保護

秘密保護契約(NDAとも呼ばれます)では、契約の合意によって、秘密とされる情報の範囲を自由に決定することが可能です。もっとも、秘密保持契約の場合、契約を締結していない第三者には、何らの請求もできません。

また、契約に定めのない限り、損害額等の立証も個別で行う必要があり、その立証も容易ではありません。

(2)不競法における営業秘密の保護

不競法でいう「営業秘密」は、①秘密管理性(情報等が秘密に管理されていること)、②有用性、③非公知性の3つが要件となっています(不競法2条6項)。こういった限定がされているのは、不競法の目的が事業者の営業利益を保護する点にあるからです。

不競法における営業秘密侵害の場合、NDAと異なり、契約取引相手に限られず、営業秘密の転得者に対し、損害賠償請求や差止請求を行使でき(不競法3条、4条等)、不競法上の刑事責任も問うことができます(不競法21条1項各号、同条3項各号)。

また、不競法における営業秘密の場合、営業秘密の侵害行為の立証及び損害額の算定規定や鑑定等の制度が整備されています。詳しくは、本記事をご一読ください。

(3)不競法における限定提供データの保護

限定提供データとは、①事業者の技術上又は営業上の情報であって、②限定提供性(限定した者に業として提供されていること)、③相当蓄積性、④電磁的管理性のある情報で、⑤営業秘密にあたらないものを指します(不競法2条7項)。営業秘密と異なり、データが相当量蓄積している必要があり(相当蓄積性)、かつ、限定提供者のみにアクセス制限が課されている必要があります(電磁的管理性・限定提供性)。

不競法では、限定提供データを転得した者に対し、損害賠償請求や差止請求を行使できますが、(不競法3条、4条等)、営業秘密と異なり、刑事上の責任を追及できません。

また、限定提供データの場合、侵害行為の立証及び損害額の算定規定や鑑定等の制度が整備されていますが、侵害行為立証の制度が営業秘密と若干異なります。詳しくは、本記事をご一読ください。

3 商品等の誤認表示がある場合

(1)不競法以外での保護

不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景表法」といいます。)は、優良誤認表示や有利誤認表示、不当表示等の表示行為を禁止しています(景表法5条各号)。

また、表示の対象が、一般消費者であることが必要です。なぜなら、景表法の目的は、一般消費者の利益を目的としているからです。

景表法上の保護としては、消費者庁による措置命令(景表法7条)、課徴金納付命令(景表法8条)、措置命令違反の場合の刑事罰等が存在します。つまり、景表法では、積極的に損害賠償請求等を行使できるのではなく、消費者庁等のアクションを待つ必要があります。

(2)不競法での保護

不競法の規制対象は、誤認表示行為だけでなく、表示した商品を譲渡したり、展示、輸出、輸入、電気通信回線を通じて提供する行為、表示をして役務を提供する行為で、これらすべての行為が禁止されています。

また、誤認表示の対象は、消費者に加え、事業者に対するものも含みます。

不競法における誤認表示の場合、営業上の利益を侵害した者は、損害賠償請求や差止請求を受け、刑事上の責任を負います(不競法3条、4条、21条2項1号・5号)。ただし、損害賠償請求及び差止請求を行えるのは、営業上の利益を侵害された者等に限定されており、一般消費者は請求できません。

4 おわりに

不競法では、「不正競争」という定義に該当する必要がある点、営業上の利益の侵害等が必要である点など、一定の制約がある一方で、他方で、差止請求や刑事罰の制度がある点で、保護の範囲が広いものとなっています。

営業秘密や限定提供データ、商品等の誤認表示が原因で営業上の利益が侵害された場合には、上記留意点を意識しつつ、本記事をぜひご覧いただけましたらと存じます。

(弁護士 西口阿里沙)

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

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