『ビジネス法務』2026年3月号の実務解説は「中小企業の事業承継をめぐる実務上の留意点」(執筆:山下眞弘弁護士)です。中小企業が円滑に事業を承継するうえで留意すべきさまざまな注意点について解説しています。
- Ⅰ 中小企業における事業承継の重要性
- Ⅱ 事業承継においてみられるトラブル
- 1親族内承継でのトラブル対策
- 2親族外承継でのトラブルと対策
- 3適正な総会議決がない場合のトラブル
- 4少数派株主による株式売渡請求
- Ⅲ 事業承継の手段―事業譲渡と会社分割
- 1事業譲渡をめぐる実務上の留意点
- 2会社分割の特性と留意点
- Ⅳ 事業承継と労働紛争
- 1事業譲渡をめぐる労働紛争
- 2会社分割をめぐる労働紛争
- 3労働紛争の予防策
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1 はじめに
本誌では、中小企業の事業承継をめぐる実務上の留意点について解説されています(元執筆者:山下眞弘弁護士、本誌133頁)。
2 中小企業の事業承継をめぐる課題
日本の企業の99%を占める中小企業は、地域雇用・技術の担い手として、日本の国際競争力の向上に不可欠な存在ですが、今、中小企業の後継者不足が深刻な問題となっており、多くの有力な中小企業が廃業の危機に直面しています。そのような中で、事業承継に関するルールを定めて円滑な事業承継を実現していくことが国全体の課題となっています。(https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shokei_ma/001/005.pdf)
3 場面別の問題点
以下では、場面別に、中小企業の事業承継をめぐる問題点を紹介します。
(1)親族内承継
中小企業においては、現経営者が、株式の大半を自社株として保有しているケースが多く、承継時に相続する自社株の評価額が高額となり、後継者は金融資産不足で事業承継できないという事態も多く生じています。
→役員報酬の引き上げ等により、自社株の価値を高め過ぎないという対策が重要となりますが、税務否認の可能性もあるため、専門家による助言を受けながら実行するのが適切です。
(2)親族外承継
先代経営者との縁によって長年続いてきた取引先から、経営者交代を機に取引を拒否されてしまうケースや、外部承継者による従来の経営方針・経営理念の変更に伴って幹部が離職するというケースも存在します。
→先代経営者による十分な根回しを行ったうえでの承継が必要となります。
(3)議事録の管理不徹底
中小企業においては、株主総会や役員会をこれまでほとんど開催したことがなかったという会社も多々存在しているのが実情です。このような場合、事業承継の実施に反対する少数株主が、過去の要決議事項の瑕疵を指摘して、自身の株式を高値で買い取ることを要求してくるケースもあります。
→このような事態を避けるためには、日ごろから適切に総会決議等を実施しておく必要があります。
(4)事業承継の手段(事業譲渡と会社分割)
会社分割は事業を包括的に承継するものであるため、取引関係、労務関係、許認可等についても、原則として個別の諾否を取得することなく承継することになります。この点が、個別の諾否・新規届け出が必要となる事業譲渡と比較した場合のメリットですが、他方で、会社分割の場合は、負債についても、簿外債務を包括承継してしまうリスクがあります。
→専門家指導の下、事案に応じた適切な手段を選択する必要があります。
4 おわりに
今回もお目通しをいただき、ありがとうございました。今月から、弊所弁護士が毎月担当していた「労務メルマガ」が、「相続判例・実務メルマガ」に刷新されました。同メルマガでは、行政書士の関上先生と、事業承継のノウハウについて随時記載をしてまいりますので、そちらも併せてご参照いただけましたら幸いです。

弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)
第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)