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【旬の判例】~第2回 「センバ流通事件」

第2回目は「センバ流通事件」です。

有期雇用労働者の整理解雇の有効性等が争われた事案です。
Xさんらは、タクシー会社Y社のタクシー乗務員でした。Xさんらは、Y社との間で有期雇用契約を締結していたところ、新型コロナウイルス感染症の影響によりY社の売上が激減したため、人員削減によるY社の経営改善のために整理解雇されました。
Xさんらは、Y社に対し、当該整理解雇について、労働契約法17条1項にいう「やむを得ない事由」を欠くことを理由に、整理解雇が無効である旨主張し、賃金の仮払い等の請求をしました。

裁判所は、本件の有期雇用契約の期間満了前の整理解雇の有効性について、①人員削減の必要性、②解雇回避措置の相当性、③人員選択の合理性、④手続の相当性の各要素を総合的に考慮した上で「やむを得ない事由」があるかどうかを判断すべきである旨判示しました。

その上で、①~④の各要素につき、
①→新型コロナウイルス感染症により売上が激減しており、そのような状況がいつまで続くのかも不透明であること等を踏まえ、人員削減の必要性が相当に緊急かつ高度にあるといえるものの、従業員の休業や雇用調整助成金の申請、臨時休車措置、諸経費の削減措置等によりY社の収支を大幅に改善させる余地があること、追加融資を受ける余地が十分に残されていること等も踏まえると、直ちに整理解雇を行わなければ倒産が必至であるほどに緊急かつ高度の必要性があったとはいえないと判断しました。
②→従業員の稼働を減らしたり、従業員に残業や夜勤を禁止したり、取引先に対して値引き交渉を行っていたりしているものの、雇用調整助成金の申請や臨時休車措置等の他の取るべき措置を活用していないことから、解雇回避措置の相当性は相当に低いと判断しました。
③→Y社は、a夜勤のみしか乗車できない者、b営業所の地元の地域の営業に慣れていない者、c顧客からのクレームが多い者を整理解雇の際の人員選択の基準とした上、Xらが当該基準を満たしていた旨主張しているものの、証拠による裏付けがないことから、人員選択の合理性の程度も低いと判断しました(Y社の立証の失敗)。
④→Y社は、整理解雇に先立ち、Xらと事前協議を行ってはいるものの、協議(あくまでも整理解雇が今後の選択肢の一つであると提示したに過ぎない)も説明(Xらの一部の者に対して口頭で説明したに過ぎない)も不十分であることから、手続の相当性も低い。
と判断しました。

裁判所は、これらの事情を総合的に考慮し、本件整理解雇について、「やむを得ない事由」を欠いており無効である、と判断しました。

整理解雇の有効性について、整理解雇は、使用者側の経営上の必要性のために実施されるものであって、労働者側には非がないことから、普通解雇と比してより厳格に有効性が判断されることになります。
また、本件は有期雇用契約者の契約期間満了前の整理解雇が問題となった事案ですが、無期雇用契約者の整理解雇の有効性が問題となる事案(労働契約法第16条の「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」の有無が問題となる事案)と比してより厳格に有効性が判断される傾向にあります(なお、本件と同様の裁判例として、アウトソーシング事件(津地判平22.11.5労判1016号5頁)が挙げられます)。

弁護士 小熊 克暢(おぐま かつのぶ)

札幌弁護士会所属。
2020年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

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