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【旬の判例】~第28回 「ヤマサン食品工業事件」

第28回は「ヤマサン食品工業事件」です。

本件では、就業規則に違反する事実があったことのみを根拠として定年後再雇用契約を解除することは、「高年齢者の雇用の安定に関する法律」の趣旨に反して無効ではないかという点が問題になりました。少子高齢化対策として、高年齢者の再雇用及び定年の後倒しが行われている中、注目のテーマとなります。

1、事案の概要
従業員XのY社就業規則違反を理由としてY社が再雇用契約を解除したことは、「高年齢者の雇用の安定に関する法律」(以下「高年法」といいます。)の趣旨に反して無効であるとして、XがY社に対し、再雇用契約上の地位確認請求を求めた事案です。

2、高年齢者の再雇用契約に関する規律
平成24年高年法改正前においては、労使協定によって再雇用の対象となる高年齢者に係る基準を定めることが可能とされていたため、企業が自主的な基準を定め、再雇用の対象となる高年齢者を選別することが認められていました。
しかし、改正後の高年法9条3項に基づき、「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」(平成24年厚生労働省告示第560号)が定められ、再雇用制度に関しては、原則として希望者全員を対象とすることが求められ、雇用者に解雇事由又は退職事由が認められないにもかかわらず再雇用を拒否することは、高年法の趣旨に反するおそれがあるとされました。

3、本判決の判断
このような中で、本判決は、概要、以下のように判示して、XのY社における従業員としての地位を認めました。
・高年法は、高年齢者の収入確保の途を図ることを目的に、原則として継続雇用を希望する定年到達者全員を65歳まで継続雇用することを企業に義務付けたものであるから、心身の故障のため業務に耐えられないと認められることや、勤務状況が著しく不良で引き続き授業員としての職責を果たし得ないといった解雇事由や退職事由に該当する事由がない限り、企業が再雇用を拒否することは認められず、企業が自主的な基準によって再雇用者の選別をすることは高年法の趣旨に照らして許されない。
・したがって、『就業規則に違反した事実(解雇事由や退職事由には至らない軽微な事実を含む。)がある場合には、再雇用をしないことができる』旨を定めたY社の規定は、解雇事由又は退職事由のある場合に限り再雇用しないことができる旨を定めた規定と限定して解釈するべきである。
・本件で、Xの懲戒事由は、Y社内規定への軽微な違反を根拠としたもにすぎないものであるから、Xに解雇事由又は退職事由は認められない。

4、おわりに
令和3年4月からは、70歳までの就業確保が企業の努力義務とされるなど、高年齢者の再雇用(継続雇用)に関する規制は日々高まっています。
本判決を契機として、今一度、社内の再雇用に関する規定が、現行の法律に対応した規定となっているかをご確認いただけましたら幸いです。

弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)

第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。

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