『ビジネス法務』2024年2月号の連載は「法務部が知っておくべき景表法の最新論点」です。その第4回は「期間限定表示・チケット販売広告」(執筆:渡辺大祐弁護士)です。「期間限定のキャンペーン」に関する留意点とチケット販売に関する広告について解説されています。
- Ⅰ はじめに
- Ⅱ 設例に関する論点の解説
- 1期間限定表示
- 2イベントのチケット販売業務における表示
- Ⅲ 本件へのあてはめ
- 1設例1
- 2設例2
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1 期間限定表示について
近時、テレビ、インターネット、店内などあらゆる場、広告媒体において、「期間限定のキャンペーンを実施します!」といった広告をよく目にします。
このような「キャンペーン期間内に限定して利益を受けられる旨の表示」のことを「期間限定表示」といいます。いたるところで目にする期間限定表示ですが、この期間限定表示にも、景品表示法上の規制があるため注意が必要です。
例えば、「期間中は30%OFF」といった値引き表示も期間限定表示に当たります。
この期間限定表示には、「その期間に限ってのみ利益を享受することができるというお得感」があり、一般消費者はこのお得感を求めて商品を購入しようと考えるため、顧客誘引効果があるといえます。
そのため、当該キャンペーンが実際には表示された期間に限定されたものではない場合、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあり、有利誤認表示として違法な不当表示(有利誤認表示の禁止・景品表示法第5条2号)となり得るのです。
2 期間限定表示の回避策?
売上が伸びたことから、キャンペーンを継続したいと思うようになり、表示方法を工夫することで不当表示の規制をかいくぐろうと考える人もいるかもしれません。
(1)例えば、1万円の商品について「今月限り1000円引き」と表示し、翌月に「今月限り990円引き」と表示することでキャンペーンを継続することはできるでしょうか。
1000円引きと990円引きとでは値引き額が異なることから、厳密にいえば異なるキャンペーンを実施しており、このような期間限定表示は不当表示には当たらないとも考えられます。
しかし、1万円の商品を購入する一般消費者にとって、10円の差額は、ないものと考える人が多数でしょう。また、わずかでも値引き額が異なればキャンペーンは継続することができるとするならば、極論1円でも金額を変更すれば、キャンペーンを継続しても不当表示を免れ得ることとなり、結論としてあまりに不合理といえます。
このような実質的に同一のキャンペーンを繰り返し行われていると評価できるものについては、不当表示となる可能性が高いため避けるべきといえます。
(2)次に、「当月限定でフォークとナイフのセットをプレゼント」、「当月限定でフォークとスプーンのプレゼント」というキャンペーンを月ごとに交互に行うことはどうでしょうか。
キャンペーンの対象が、ナイフとスプーンという別の物であることから、一見すれば違法なキャンペーン表示とはいえないようにも思えます。
しかし、ナイフとスプーンという類似した商品であり、金銭的な価値も近似しているものである場合、一般消費者はキャンペーンが継続していると考えるのが通常でしょう。このような表示も、同様のキャンペーンが繰り返し行われているものとして、一般消費者に誤認を生じさせる不当表示と扱われる可能性が高いため、避けるべきといえます。
(3)では、上記の例で、フォークとナイフのプレゼントキャンペーンのみを行っている場合はどうでしょうか。当該キャンペーンを2か月に1回ごとの隔月で行うことは問題ないのでしょうか。
この場合も、やはり一般消費者が、「この間行われていたキャンペーンは期間限定ではなかったのか」と考える可能性は十分にあり、誤認が生じるおそれがあるため、不当表示として違法とされるリスクがあり、避けるべきといえます。
このようなキャンペーンを繰り返し行うのであれば、隔月で繰り返す旨等をしっかり明記して対応を検討する必要があるといえるでしょう。
いかがでしたでしょうか。今回は、「期間限定表示」の記事について紹介させていただきました。期間限定と謳うからには、実際に期間を限定しないといけないことには注意が必要です。本記事には、その他にもチケット販売広告についての景品表示法上の問題点について記載されています。広告を行う上で、違法な不当表示とみなされることのないよう、ぜひ本記事をご一読していただけますと幸いです。
弁護士 髙木 陽平(たかぎ ようへい)
札幌弁護士会所属。
2022年弁護士登録。2022年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)