『ビジネス法務』2024年11月号の特集は「すぐに使えるコンプライアンス研修チェックリスト」です。その中に「『接待交際と経費使用』に関するコンプライアンス遵守」(執筆:平木太生弁護士)があります。法務部員のみならず、経営者を含めた企業全体で押さえておくべき接待交際費に関する税務上の知識、実際の事例に基づいたリスク管理のポイント、「ギフトコンプライアンス」に関連する具体的な事件や判例について紹介されています。
- Ⅰ はじめに
- Ⅱ 接待交際費の定義と税務上の取扱い
- 1交際費の定義
- 2交際費の税務上の取扱い
- Ⅲ 経費使用とギフトコンプライアンスの重要性
- Ⅳ 経費使用やギフトコンプライアンスに関する事件
- 1矢作建設工業の交際費過少申告事件
- 2三菱日立パワーシステムズの贈賄事件
- 3パナソニックの贈賄事件
- Ⅴ コンプライアンス研修における重要ポイント
- 1税務上の基礎知識の習得
- 2正しい記録方法の徹底
- 3企業の倫理規範やガイドラインの遵守
- 4実際の事例を用いたケーススタディ
- 5内部監査の実施とフィードバックの重要性
- Ⅵ おわりに
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
本記事では、企業全体で押さえておくべき接待交際費に関する税務上の知識、実際の事例に基づいたリスク管理のポイント等についての解説が行われています。
まず、日本の税法において、接待交際費とは、「得意先、仕入先その他の事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と定義されています。また、交際費の税務実務上の取扱いとして、中小企業の場合、①社外飲食接待費のうちの50%か②社外飲食接待費800万円までのいずれかの金額の損金算入が可能であり、大企業の場合、年間の交際費の50%のみが損金算入可能となっています。
次に、もし、税務調査や会計監査が行われた場合、接待交際費該当性について、接待の目的や参加者の氏名とその関係、接待内容(飲食の種類や場所、贈答品の詳細等)、支出金額、当該接待が事業にどのように貢献されたかについて、細かく調査される傾向にあります。税務調査の結果、上記の考慮要素に照らし、交際費が実際には個人的な支出であったり、不正な目的で支出されたものであると判断された場合、追徴課税がなされる可能性や社会的信用を失う可能性があるため、適切に接待交際費の管理・記録を行うことが必要です。
また、本記事では、ギフトコンプライアンスに関する解説もなされています。ギフトコンプライアンスとは、企業が取引先や顧客に対して提供する贈答品や接待が法令や企業倫理に違反しないように管理・監督することを意味します。適切な接待・贈答品の提供であれば、取引先や顧客との関係の維持・強化に繋がるため有用です。もっとも、不相当な接待や過度な接待、高額な贈答の場合、贈賄に該当したり、損金処理の認められない交際費に該当するとして追徴課税がなされたりする可能性がある点に注意が必要です。本記事では、近年問題となった経費使用やギフトコンプライアンスに関する事件についても紹介されているのでご確認ください。
接待交際費の管理、ギフトコンプライアンスの適正な運用は、企業のコンプライアンスにおいて重要な要素です。是非本記事をご一読ください。
弁護士 小熊 克暢(おぐま かつのぶ)
札幌弁護士会所属。
2020年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)