『ビジネス法務』2022年11月号の実務解説は「ツイート削除請求を認める最高裁判決の意義」です。インターネット上のネガティブな投稿が、売上や求人などの文脈で企業に不利益を及ぼすケースは少なくありません。Twitter上のツイートについて、その削除を認めた令和4年最高裁判決は直接的には過去の逮捕情報に関するものではありますがが、プライバシー侵害一般、場合によってはその他の権利の侵害に関しても影響を与える可能性があります。企業のレピュテーション(評判・風評)リスクのコントロールとの関係という側面から、本判決の意義が検討されています。
- Ⅰ 令和4年最高裁判決の概要
- Ⅱ ネット投稿の削除請求の基本構造
- 1 投稿の削除と被害者権利
- 2 投稿自体の削除と検索結果の削除
- Ⅲ 令和4年最高裁判決と平成29年最高裁決定の相違
- 1 平成29年最高裁決定の示した基準
- 2 令和4年最高裁判決の示した基準
- 3 「明らか」要件の要否
- Ⅳ 「デジタル・タトゥー」と企業のレピュテーションリスク
- Ⅴ 企業のレピュテーションリスクへの対応
- 1 平成29年最高裁決定と企業の対応
- 2 今後の課題と活用可能性
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
本記事では、インターネット上の過去の逮捕情報等の削除をめぐる令和4年最高裁判決(最判令和4年6月24日裁時1794号48頁)と平成29年最高裁決定(最決平成29年1月31日民集71巻1号63頁)を踏まえ、インターネット上のネガティブな投稿に対する企業対応の今後の見通しについての説明がなされています。
インターネット上のネガティブな投稿(悪質なデマ等)について、これを放置した場合、投稿の内容如何によっては売上の減少等の不利益を被る可能性が考えられます。
対応策としては、①投稿者やwebサービスの運営者に対して、名誉権やプライバシー侵害に基づく差止請求(仮処分の申立て)を行い、当該投稿自体の削除を求める方法(投稿自体の削除)、②インターネット検索サイトの検索事業者に対して、①と同様の請求を行い、当該投稿の検索結果の削除を求める方法(投稿へのアクセスを事実上遮断する)といったものが考えられます。
この点に関して、個人の過去の逮捕情報の削除に関する事例ではあるものの、2つの最高裁判例があります。一つ目は、②の検索結果の削除が問題となった平成29年最高裁決定であり、二つ目は、①の投稿自体(ツイート)の削除が問題となった令和4年最高裁判決です。
平成29年最高裁決定では、現代社会における検索エンジンの情報流通の基盤としての役割の重要性を鑑み、過去の逮捕事実を公表されない法的利益と当該情報等にかかる検索結果を提供する理由に関する諸事情を比較衡量し、前者が後者に「明らかに」優越する場合に検索結果の削除が認められるべきである旨判示しました。他方で、令和4年最高裁判決では、ツイッターのサービスの内容や利用実態等を踏まえ、(検索エンジン程の役割の重要性がないとして、)前者が後者に優越する場合に投稿の削除が認められる旨判示しました(「明らか」であることまでは不要)。
当該2つの判例の射程がどこまで及ぶのかについては議論の分かれるところではありますが、インターネット上のネガティブな投稿に対する企業対応を検討するにあたって、一考に値する判決であると思われます。
本記事では、当該二つの判例やインターネット上のネガティブな投稿に対する企業対応について、より詳しく説明されています。この機会に是非ご一読ください。
弁護士 小熊 克暢(おぐま かつのぶ)
札幌弁護士会所属。
2020年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)