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【ビジネス法務】AI開発をめぐる著作権と契約によるオーバーライド問題

『ビジネス法務』2022年12月号のTrend Eyeは「AI開発をめぐる著作権と契約によるオーバーライド問題」です。今日では人口知能(AI)という言葉を聞かない日はないほど、AIはわれわれの社会に広く浸透しています。本稿では著作権法の平成30年改正と、同改正後に残された問題である契約によるオーバーライドの問題について紹介されています。

  • ・はじめに
  • ・AIと著作権法
  • ・残された課題〜契約によるオーバーライド問題
  • ・おわりに

 <PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

1 AIは私たちの生活に浸透し、今やAIを使わない日はないと言っても過言ではない状況になっております。
政府は、AI開発の環境整備のための施策として、平成30年、著作権法改正を行いました。本記事は著作権法改正と、改正後に残された課題である契約によるオーバーライド問題について解説しております。

2 平成30年著作権法改正では、AI等の新技術を活用した新たな著作物の利用にも柔軟に対応できる権利制限規定の一つとして、著作権法30条の4が創設されました。
著作権法30条の4は下記のとおりです。

   記
(著作物に表現された思想または感情の享受を目的としない利用)
第30条の4
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想または感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度においていずれの方法によるかを問わず利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
(略)
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
(略)

3 著作権法30条の4は、AI自体は著作物の表現の価値を享受しないということで、AIが学習するためのデータの収集行為やAIの開発を行う第三者への学習用データの提供行為などは著作権侵害ではないことを明確にしました。
もっとも、本規定があったとしても、契約によってAIの学習のためのデータ収集や提供を制限することも可能ではありますので、仮に契約書にそのような規定があった場合には、その規定と著作権法30条の4の関係性を検討する必要があります。
AI開発に関する契約書のドラフト、レビューの際には是非当事務所にご相談ください。

(弁護士 櫻井 彩理)

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

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