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【ビジネス法務】令和2年民法改正における消滅時効制度の変更点

 『ビジネス法務』2023年3月号の特集3では「令和2年民法改正における消滅時効制度の変更点」が取り上げられています。債権の消滅時効は、債権管理の場面のほか、契約書などの文書の保存期間、偶発債務の引当要否の検討などの場面でも問題となることがあります。改正法の施行前に発生した債権については改正前の規定が適用される場合もあります。本稿では債権の消滅時効に関する改正内容が再確認できます。

  • Ⅰ 「時効」とは
  • Ⅱ 改正された内容
  •  1時効の援用
  •  2時効の完成猶予および更新
  •  3時効期間
  • Ⅲ 民法以外の法令における消滅時効
  •  1賃金の請求権
  •  2手形・小切手・電子記録債権
  •  3保険金請求権・保険料請求権

 <PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

1 はじめに
 本稿では、令和2年に法改正された、債権の消滅時効制度について解説されております。債権の消滅時効とは、例えば、他人にお金を貸した場合、何年もの間お金を返してもらわずに放置しておくと、お金を返してもらえなくなるというものです。
債権を取り扱うビジネスパーソンには、自らの有する債権を消滅させることがないよう、改正内容に留意しながら、債権を適切に管理することが求められます。

2 時効の援用
 5年間という消滅時効期間が経過しても、それだけで当然に債権は消滅することはありません。「時効が完成したことを主張」(=時効の援用)したときにはじめて債権が消滅します。
本改正により、消滅時効の援用ができる者に、「保証人」、「物上保証人」、「第三取得者」、「その他権利の消滅について正当な利益を有する者」が含まれる旨明記されました。
消滅時効が問題となったときに、自己又は相手方が援用権者に当たるかが容易に判断できるようになりましたので、第一に確認してみることが重要です。

3 時効の完成猶予と更新
 時効の成立を妨げる事由として、時効の「停止」と「中断」というものがありました。本改正により、それぞれ、時効の「完成猶予」と「更新」に改められました。
 時効の「完成猶予」とは、進行する時効を一時的に止めることができます。猶予期間が経過すると止まっていた時効が途中から再び進みはじめることとなります。
 これに対し、時効の「更新」とは、時効期間をリセットし、時効を再度ゼロから進行させることができます。
 本改正により、完成猶予事由として、「協議を行う旨の合意」が新たに追加されるなど、時効の成立を妨げる方法が一部拡大されました。時効を止める方法について把握しておくことで、対処するまでの時間稼ぎができるなど交渉の幅も広がります。

4 時効期間
 これまで、消滅時効期間は、短期消滅時効や商事消滅時効といったものがあり、時効期間がそれぞれ異なっておりました。改正民法では、これらの制度がなくなり、債権者が権利を行使できることを知った時から5年、客観的に行使することができた時から10年に統一されました。改正前の民法では、一般的な消滅時効期間が10年とされていたため、5年に短縮されたことは留意しておかなくてはならない変更点の一つです。
 10年と思っていた時効期間が実際は5年となっており、思いもよらず債権を消滅させてしまったという事態が生じないよう適切な債権管理を行うことが大事になります。

5 おわりに
以上、債権の消滅時効に関する改正点である「時効の援用」、「時効の完成猶予と更新」、「時効期間」について、簡単に説明させていただきました。
本記事では、これらの改正点についてより詳細かつ具体的な解説がなされております。
特に、どのような行為がそれぞれ「完成猶予」・「更新」事由に当たるかについての説明は、時効を防ぐために何をしなければならないか理解するうえで、非常に有益なものとなっております。他にも、時効の主観的起算点である「権利を行使できると知ったとき」とはいかなる場合を指すかなど、時効の問題に対処する上で重要な指標となる解説がなされており、本稿は一読する価値のあるものとなっております。ぜひ一度ご覧ください。

弁護士 髙木 陽平(たかぎ ようへい)

札幌弁護士会所属。
2022年弁護士登録。2022年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

協力:中央経済社

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