弁護士法人PLAZA総合法律事務所 PLAZA LOW OFFICE

【ビジネス法務】ChatGPTの社内利用に伴う法的リスク・対応

『ビジネス法務』2023年7月号の実務解説は「ChatGPTの社内利用に伴う法的リスク・対応」(執筆:角田進二弁護士)です。近年、人工知能の大規模言語モデルが活発化し、急速に社会に浸透してきています。企業内での利用頻度やニーズについても高まっているが、明確なルールが決まっていないなかでは企業にとっては重大な危険性があります。本稿では特に社内利用についての留意点と対策が考察されています。

  • Ⅰ はじめに
  • Ⅱ ChatGPTを使うことのリスク
  •  1個人情報漏えいリスク
  •  2機密漏えいのリスク
  •  3知的財産のリスク
  •  4その他
  • Ⅲ 具体的な対応
  •  1社内規定・危機管理規定の整備、監査システムの強化
  •  2取引先対応
  •  3ステークホルダー(AIガバナンスの流れ)

 <PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

本記事では、近年活発化しているChatGPTを社内で利用することが、企業にとって重大なリスクを伴うこと及びそのリスクに対応する手段について説明がなされています。

ChatGPTとは、人工知能の大規模言語モデル(LLM)の一つで、質問を投げかけると対話形式で質問に対する回答が返ってくるというサービスです。業務効率化のため、企業内でのChatGPTを利用する頻度やニーズも高まってきています。しかし、ChatGPTの社内利用にはリスクも伴うため注意が必要です。

まず、ChatGPTに質問として情報を入力することになるため、情報漏洩のリスクがあります。ChatGPT上の会話は、トレーニング目的やシステム改善のために使用されることがあり、開発元のOpenAIにデータを共有することとなるからです。

顧客、取引先、従業員等の個人情報をChatGPTに入力してしまうと、プライバシー上のリスクがある上、この個人情報の第三者提供は「委託」に該当せず、個人情報保護法27条5項1号に抵触する可能性があります。また、データの保存先サーバは米国にあり、同法28条により本人の同意が必要となり、同意が得られなければ同条に違反する可能性があります。

また、自社の開発したソースコード(プログラムやソフトウェアを構成するテキスト)をChatGPTに修正依頼をしたという事件も発生しており、自社の秘密情報が流出してしまうおそれがあります。他にも、ChatGPTで特定の顧客データを共有することは、そのデータの使用目的に関する顧客との契約違反となる可能性があります。

次に、ChatGPTの利用には知的財産権侵害のリスクもあります。日本やアメリカにおいては、人工知能が自律的に生成した著作物について、現行制度上、権利の対象とは考えられていません。しかしながら、生成物が原作を複製・翻案したものにとどまるものもあるため、利用の仕方によっては、原作の著作権を侵害する可能性があります。

これらのリスクに備え、次のような対応策が考えられます。

まず、ChatGPTの社内利用に関するルールを設けることが有用です。秘密情報をいくつかの種類に分け、優先順位をつけることで、優先順位の高い情報の取扱いには細心の注意を払わせることができます。また、秘密情報にはアクセス権がなければアクセスやコピーができないようにすることで漏洩の危険を最小限に留めることができます。

他にも、部署ごとにChatGPTを使うニーズと目的が異なることから、部署の扱う情報や知識に応じて個別にルールを作り管理することが有用です。例えば、ITエンジニアは、新しい技術を試す意欲が高く、AIのリスクに関して正確な知識があるため、他の部署に比べChatGPTの利用に関し柔軟なルールを作ることができます。

次に、情報漏洩等を生じさせないために、社内従業員に対して、データ取扱いに関する教育を行い、適切なデータ管理が実施されるようにすることが重要です。具体的には、個人データなどを入力させないようにするため、具体と抽象を使い分けることができるか否かなどの能力チェックをすることや、定期的に具体的な使い方の研修を行うことで、ChatGPTに入力すべきデータについての理解を深めていく必要があります。

また、誤ってインプットしてしまったなどの事故について情報共有することも重要です。情報を共有することで問題が発生した場合に迅速に対応できる体制を整えることができます。

以上、本記事におけるChatGPTの社内利用に伴うリスク及びその対策について一部紹介させていただきました。

本記事では、他にも、ChatGPTの利用に関する取引先との対応の仕方等についても触れられています。

ChatGPTの利用によって、不測の事態を招かないようにするため、ぜひ本稿をご一読いただければ幸いです。

弁護士 髙木 陽平(たかぎ ようへい)

札幌弁護士会所属。
2022年弁護士登録。2022年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

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