『ビジネス法務』2023年7月号の実務解説は「改正障害者差別解消法の施行に向けた企業対応ポイント」(執筆:水田進弁護士 関根ゆりの弁護士)です。2024年に改正法が施行される「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」。この改正内容の解説と、同法をめぐる最新動向をふまえた実務対応についての検討が解説されています。
- Ⅰ 障害者差別解消法とその改正の内容
- 1障害者差別解消法とは
- 2障害者差別解消法における行政機関等および民間の事業者の義務
- 3改正の内容
- 4基本方針の改定の内容
- 5合理的配慮の提供義務等に違反した場合
- Ⅱ 企業における対応
- 1社内の参考資料・ポリシー等の作成
- 2役職員への教育
- Ⅲ おわりに
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
本記事では、令和6年4月1日に施行される改正障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)の概要及び企業対応のポイントに関する解説がなされています。
障害者差別解消法は、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害者差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月に制定、平成28年4月より施行された法律です。
障害者差別解消法には、行政機関や民間の事業者等の義務として、①障害を理由として不当な差別的取り扱いをしてはならない義務(法的義務。法7条1項、法8条1項。)、②社会的障壁(障害者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような事物、制度、慣行等。法2条2号。)について、障害者から社会的障壁の除去を必要とする旨の要望があった際に、(事業者にとって過度な負担とならない範囲で、)社会的障壁の除去に向けて必要かつ合理的な配慮を提供する義務(事業者について、現行法上は努力義務。法7条2項、法8条2項。)、③②の社会的障壁の除去に向けた必要かつ合理的な配慮を的確に行うために、施設の整備や職員に対する研修等といった環境の整備に努めなければならない義務(努力義務。法5条)が定められています。改正障害者差別解消法の改正内容の大きなポイントは、②の事業者の合理的配慮の提供義務が、努力義務から法的義務に改められたことです。以下、②の事業者の合理的配慮の提供義務について解説します。
②の合理的配慮の提供義務とは、a障害者から社会的障壁の除去を必要とする旨の要望があった際に、bその負担が事業者にとって過重でないときには、c社会的障害の除去のために必要かつ合理的な配慮を提供しなければならないというものです(例:車椅子利用者のために段差に携帯スロープをかけて昇降の補助を行う。筆談、手話等の活用や振り仮名、写真、イラスト等を用いてわかりやすい説明を心掛ける等の、意思疎通にかかる対応を行う。)。bの過重な負担について、事業活動への影響の程度、実現困難性、費用・負担の程度、企業の規模、企業の財務状況を考慮し、具体的な場面や状況に照らし、当該事業者にとって過重な負担であるか否かが判断されます。また、cの必要かつ合理的な配慮について、政府が策定した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」に具体例が記載されているほか、内閣府が公表している「合理的配慮サーチ」においても対応例が記載されており、実際に障害者から社会的障壁の除去対応を求められた際に参考になるものと思われます。
なお、合理的配慮の提供義務に違反した場合、各省庁の大臣から対応状況についての報告を求められたり、助言・指導・勧告等を受けたりする可能性(及び当該措置に伴う社会的信用等の低下の可能性)があるほか(法12条)、当該報告を怠ったり、虚偽の報告をした場合、20万円以下の過料に処せられる可能性があるため(法26条)、注意深く対応する必要があります。
本記事では、①や③の義務内容の解説や改正障害者差別解消法にかかる企業対応についての具体的な解説がなされています。この機会に是非ご一読ください。
弁護士 小熊 克暢(おぐま かつのぶ)
札幌弁護士会所属。
2020年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)