『ビジネス法務』2023年12月号の実務解説は「中小企業へのエクイティ・ファイナンス実施上の留意点」(執筆:小川周哉、菅野邑斗、戸田涼介弁護士)です。中小企業庁が2023年6月に公表した「中小エクイティ・ファイナンス活用に向けたガバナンス・ガイダンス」をふまえて、中小企業に対するエクイティ・ファイナンスを実施する際の留意点が解説されています。
- Ⅰ なぜ「中小企業」への「エクイティ・ファイナンス」を注目すべきか
- Ⅱ 「ガバナンス」とあわせて検討すべき点
- 1出資時から「出口」を意識すべき
- 2決議権割合に応じた会社法上の権利を意識する
- Ⅲ 出資対象の「ガバナンス」について特に検討すべき点
- 1許認可の取得
- 2「各種労働法令」
- 3株式と株主の把握・整理
- Ⅳ 終わりに
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1 はじめに
本稿では、中小企業へのエクイティ・ファイナンスについて、出資者が留意すべき事項が解説されています(元執筆者:小川周哉、菅野邑斗、戸田涼介弁護士)。
2 2つの資金調達手段、及びエクイティ・ファイナンスのニーズ
企業にとっての資金調達手段には、金融機関からの『借入』(デット・ファイナンス)と、株式の発行に伴う投資家からの『出資』(エクイティ・ファイナンス)の2つがあります。
コロナ渦におけるDX化(デジタル技術の進展)に伴い、大規模な設備投資が必要となっている企業は少なくありません。しかし、コロナ渦において、コロナ融資等の緊急融資を受けた多くの中小企業は、過剰債務の状態にあり、新規『借入』の与信を得ることは難しくなっています。
このような中、中小企業庁は、2023年6月に、「中小エクイティ・ファイナンス活用に向けたガバナンス・ガイダンス」(以下「本ガイダンス」といいます。)を公表しており、中小企業によるエクイティ・ファイナンスは、増加していくことが見込まれています。
3 エクイティ・ファイナンスの留意点
(1)非公開株式の売却困難性
公開会社の株式とは異なり、非公開の中小企業の株式の買い手を見つけるのは容易ではありません。
そのため、出資者は、エクイティ・ファイナンスの際には、対象会社との株主間契約書(出資契約書)において、将来一定の事由が生じた場合には、出資者が保有している全ての株式を対象会社が出資額以上で買い取ることを求めることができる権利を規定しておくことが有用です。
(2)対象会社のガバナンス調査
また、エクイティ・ファイナンスの際には、出資後に対象会社の事業価値を毀損する重大な事由が発覚して出資が失敗に終わってしまうというような事態を避けるためにも、株主間契約(出資契約)に先行して、対象会社のガバナンスを調査(デューデリジェンス)しておくことが望ましいです。
具体的には、①許認可の取得、②各種労働法令、③株主の把握といった項目が、とりわけ重要な調査項目です。
4 おわりに
今回もお目通しをいただき、ありがとうございました。
中小企業を対象とした出資の場合には、どうしても、長い付き合いのある会社からの依頼なので、信頼関係の元、対象会社についての特段の調査をしないままエクイティ・ファイナンスを実施してしまう、というようなケースが多いことも実情かもしれません。 本稿を契機に、本ガイダンスにお目通しいただき、エクイティ・ファイナンスへの向き合い方をご検討いただければ幸いです。
弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)
第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)