『ビジネス法務』2024年6月号のTrend Eyeは「パブリックドメイン作品との付き合い方〜ミッキーマウスを題材に」です(執筆:野瀬健悟弁護士)。米国著作権の保護期間が切れて、大きな話題となったパブリックドメインと付き合うにあたって、注意すべきポイントが紹介されています。
- ・日本ではオリジナルミッキーの著作権が生きている可能性がある
- ・ミッキーマウスのイラストすべてが使用できるわけではない
- ・パブリックドメインの利用制限
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1928年に公開された「蒸気船ウィリー」に登場するミッキーマウス(以下、「オリジナルミッキー」という。)の米国著作権の保護期間が切れて、2024年1月1日からパブリックドメインとなり、大きな話題となりました。パブリックドメインとは、著作権が消滅し、誰でも無許諾で自由に利用できるようになった著作物をいいます。有名キャラクターがパブリックドメインとなることで、グッズ化や広告利用など、様々なビジネス利用の可能性が広がりましたが、果たして、これら有名キャラクターを本当に自由に使用できるのでしょうか。
1 オリジナルミッキーの著作権が日本では生きている可能性
日本でも、2024年からオリジナルミッキーがパブリックドメイン化したと誤解されがちですが、著作権の保護期間は国によって異なります。日本の現行著作権法では、個人の著作物は作者の死後70年間保護され、法人など団体名義の著作物や、映画の著作物については特別に「公表後」70年間保護されます。そこに戦時加算が加わるとすると、日本では、オリジナルミッキーは2052年まで著作権が生き残る可能性があります。日本の裁判所において、日本でもパブリックドメイン化していると認められる可能性も十分にありますが、権利侵害のクレームを受けるリスクがあることも確かですので注意しておかなくてはなりません。
2 ミッキーのすべてのイラストを使用できるわけではないこと
仮に、オリジナルミッキーがパブリックドメインになっているとしても、例えば、「蒸気船ウィリー」以降にカラー化されたミッキーのイラストは別の著作物であるため無断で使用することはできません。あくまで白黒の蒸気船ウィリーに登場するミッキーのみがパブリックドメインになるのであって、その他のバリエーションのミッキーのイラストを使用すれば、著作権を侵害することになります。
3 パブリックドメインの利用制限
中世ヨーロッパの絵画や寺社仏閣の建物や仏像など、明らかにパブリックドメインでありながら自由な利用が妨げられる場合があります。
芸術作品を書籍、ウェブサイト等に掲載する場合は、作品の写真を利用することになりますが、被写体である作品がパブリックドメインであっても、その写真自体は別の独立した著作物となります。そのため、例えば、美術館や寺社仏閣のウェブサイトから画像をダウンロードして転載すれば、それは著作権の侵害になる恐れがあります。
パブリックドメインとなった作品を自ら撮影し、その写真を利用する分には著作権の問題は生じません。ですが、理想の写真を自身で撮影するのはなかなか難しく、「撮影禁止」とされている場所で撮影をすれば、施設管理権を理由に退去を求められることになります。また、美術館のチケットを購入する際に、同意した規約に無断撮影した場合に違約金が発生する旨定めがあれば、無断撮影が発覚することで違約金の請求を受けることになります。
このように、本記事では、パブリックドメインと付き合うにあたって注意すべきポイントが紹介されています。パブリックドメインを利用する際は、本記事を参考に、著作権侵害のリスクがないか見直してみてはいかがでしょうか。
弁護士 髙木 陽平(たかぎ ようへい)
札幌弁護士会所属。
2022年弁護士登録。2022年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)