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【旬の判例】~第18回 「龍生自動車事件」

第18回は「龍生自動車事件」です。

本件は、龍生自動車株式会社(以下、「Y社」といいます。)から解雇されたXさんが、解雇されたことに対し、①解雇が無効であると主張して労働契約上の権利を有する地位にあることの確認ならびに解雇後の賃金と遅延損害金を求めるとともに、②慰謝料の支払いを求めた事案です。
Xさんは、Y社と平成14年11月1日に労働契約を締結し、タクシー乗務員として勤務し、平成30年7月からはA労働組合に所属しました。ところが、Y社は、令和2年4月15日、近年の売上低下および新型コロナウイルス感染症拡大に伴うさらなる売上の激減により就業規則に基づき、Xさんやその他従業員を同年5月20日付けで解雇するとの意思表示をしました。
Y社の就業規則には、解雇事由として「やむをえない事由のため、事業の継続が不可能になったとき」と定められています。
そして、Y社は、令和2年6月2日、臨時株主総会の決議により解散し、Y社の清算手続きが開始しました。
本件の争点としては⑴Xの解雇の効力と、⑵慰謝料請求の可否が問題となりました。

一般的に、裁判所が解雇の有効性を判断する際には、「解雇権濫用の法理」(労働契約法16条)により判断しております。つまり、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認できない場合には権利の濫用として無効になる、という判例法理です。
会社の解散に伴う解雇については、原則として有効とする裁判例もありましたが、本件は、原則有効とはせず、この判例法理を適用して、Y社のXさんに対する手続的配慮について重点的に審査しました。
そして、本件解雇は新型コロナウイルス感染症の感染拡大や緊急事態宣言発出に伴う営業収入の急激な減少という予見困難な事態を契機としてなされたもので、Y社がXさんに対し事前に有意な情報提供をすることは困難であった上、解雇後には一応の手続的配慮がされていたことからすれば本件解雇が著しく手続的配慮を欠いたまま行われたとは言えないとして、解雇は有効であり、慰謝料請求は認められないと判断しました。
Y社が、Xさんの所属するA労働組合と交渉を重ね、経営状況と事業廃止の経緯を説明したことや、Xさんに対し解雇手当金の支給を申し出たことなどが、手続的配慮として評価されたと言えます。

(弁護士 櫻井 彩理)

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