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【旬の判例】~第44回 「国立大学法人東北大学(雇止め)事件(控訴審)」

第44回は「国立大学法人東北大学(雇止め)事件(控訴審)」です。

本件では、有期労働契約における雇止めの効力が争われました。

1 事案の概要

Xさんは、Y法人(国立大学法人東北大学)の大学院で時間雇用職員等として勤務していました。Xさんは、平成18年4月1日、Y法人との間で、時間雇用職員等として、契約期間を同日から平成19年3月31日までとする有期雇用労働契約を締結し、平成19年度から平成29年度まで契約更新がされていました。

また、平成26年4月1日から施行された就業規則において、期間の定めがある労働契約の期間を通算した期間の上限は、5年以内とする上限条項が規定されていました。

ところが、Y法人は、同年3月31日、Xさんとの間の労働契約の更新を承諾せず、雇止めをしました。

2 有期労働契約における雇止め 

使用者が有期労働契約の期間満了に際して、満了後は契約を更新しない旨を労働者に通知した場合、労働契約は当然終了するのが原則です。

しかし、この原則を貫いた場合、使用者がいかなる契約形式をとるかによって、労働者の法的地位が不安定なものとなってしまうおそれがあります。

そこで、契約の形式ではなく実態に基づいて労働者の実質的な保護を図るという観点から、労働者において更新に対する合理的期待が生じたなどといえる場合には、労働契約法19条に基づき、雇止めが制限されます。

具体的には、①契約期間の終了ごとに厳密な更新手続がされているか、②雇用の常用性、③更新の回数や雇用通算期間、④雇用継続に対する期待をさせる使用者の言動などを考慮して判断されます。

3 本件の争点

労働契約法19条に基づき、Y法人の雇止めが無効であるかが主たる争点となりました。

4 裁判所の判断 

①契約期間の終了ごとに厳密な更新手続がされているか

本件各労働契約は、契約期間の満了前に、Xさんの更新希望の確認、Y法人における承認が行われ、労働契約の締結に際しては、Xさんに対する労働条件通知書の交付ないしXさんによる労働条件通知書兼同意書への署名押印を経て締結されるなど、相応に厳格な手続がなされていた。

②雇用の常用性

Xさんが平成18年度から平成29年度までに従事した業務がY法人における基幹的業務ではなく、Xさんが従事した業務が時期によって変化していることからもその雇用につき常用性があるとはいえない。Xさんの担当業務は、本件雇止め後、後任が補充されず時間雇用職員が担当する業務ではなくなったことからも、雇用について常用性はない。

③更新の回数や雇用通算期間

更新年数を重ねる毎に更新率が増加しているからといって直ちに契約期間管理が形骸化していたとはいえず、むしろ、時間雇用職員のうち3年を超えて更新された職員は採用者全体の3割に満たさず、雇止めされた職員が相当の割合に上っていた。

また、Xさんが平成18年4月1日から平成30年3月31日まで契約を更新してきたことは当然考慮されるべきであるが、Xさんの契約更新の回数及び通算雇用期間を前提に、本件の各労働契約に契約条件(時間給の金額、勤務時間及び社会保険加入条件等)や契約締結手続に一定の差異が認められる。 

④雇用継続に対する期待をさせる使用者の言動

平成26年3月31日時点で3年の更新上限が到来するにもかかわらず、その後も平成29年度まで契約が更新されたことは、Y法人の就業規則等によるものであり、更新上限(平成30年3月31日)を超えて更新するとの期待を抱かせる言動を行ったとは認められない。

以上の事実などを認定したうえで、労働契約法19条の適用がなく、雇止めは有効であると判断されました。

5 まとめ

近年、企業や大学において有期労働契約の更新について上限を設ける就業規則の改正が行われ、無期契約に転換する直前に更新上限条項に基づいてされた雇止めの適法性を争う事件が散見されます。

裁判例においても、事例によっては更新上限条項が法の潜脱となりうる旨を判示しているものもあり、雇止めに向けた手続などを慎重に進める必要があります。 更新上限条項を設ける場合には、あくまでも上限の定めにすぎず、それまでの更新を約束するものではないことなどを労働者に対して説明し、同意を得ることが大切です。

弁護士 武藤 雅之(むとう まさゆき)

第二東京弁護士会所属。
2023年弁護士登録。2024年PLAZA総合法律事務所入所。神奈川県出身。

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